第43話

 ローゼン・カメリア・サニーサイド・スマイリング・ブレイク・アロー・ウーマンはラック・ザ・リバースマンの言葉に面食らっていた。


 ハンド・メルト・マイトが彼に向かってウィンクをする。


 この二人、性格があうといった感じでもないのだけど、なんだか太い友情みたいなものを感じる。

 女ばかりのチームに男二人だけだったからだろうか。


「そうよね。あたしたちは二人のいいところをたくさん知ってるものね」


 ローゼン・カメリア・サニーサイド・スマイリング・ブレイク・アロー・ウーマンはそう答えた。


 少しだけ気を使った答えだったけど、こんなところで雰囲気を悪くしてもしょうがない。


「だってさ、メンタルの強さに関しては二人は誰にも負けない。宇宙という何が起こるかわからに場所でこれ以上の人材はいないさ」


 その言葉は結構ショックだった。


 ハンド・メルト・マイトの性格も、サンシャイン・ダイナの振る舞いも、ローゼン・カメリア・サニーサイド・スマイリング・ブレイク・アロー・ウーマンにとっては少々厄介で短所だとすら感じていた。

 しかし言われてみれば、そうなのだ。

 そして今まで、無邪気で雑な性格だと思っていたラック・ザ・リバースマンがそう言う風に仲間を見ていたことに感動した。


 改めて、自分はすごいチームにいたと震えがやってきた。


「俺は思うんだぜ。なんで俺たち能力者は生まれたのかって。それはこのためだ。この世界を救うために生まれた。これこそが俺たちの生きる道なんだぜ」


 ハンド・メルト・マイトが顔の傷を指でなでてひときわ低い声で言った。


 部屋は静かな沈黙が流れた。


 みんなで顔を見合わせている。


 誰が最初に言い出すかと思ったけど、誰も言わなかったのでローゼン・カメリア・サニーサイド・スマイリング・ブレイク・アロー・ウーマンが口を開いた。


「あ、うん。そうね。同じこと言ってる人結構いるけど」

「うん、最近良く聞くさ」

「はい。割と……言ってる人はいますね」

「ネットでも見るよ」

「なんかいまさらって感じー」


 これだけ言われてもハンド・メルト・マイトは満足そうにニヒルに微笑んでる。


 ザ・パーフェクトがパンパンと手を叩いてしゃべりだした。


「はい、次ー! 良いこと言いたい人いる? 今のうちだよ」

「そういう時間帯だったの?」

「そうだよ。感動的な演説用意してるんでしょ、みんな。どうせ」

「わかったさ。ではボクはウーバー・ワンの格言を。彼はかつてこう言ったのさ、私は一度として自分のために戦ったことはない。スーパーヒーローはスーパーヒーローになれなかったもののために戦う。人は誰しも無力さに負けそうになる。力あるものはそのものたちの希望として戦う。思いを背負ってっ戦う。スーパーヒーローの戦いは、希望を抱くすべての者の戦いなのだ。ってさ」


 ラック・ザ・リバースマンが彼なりに極限まで低い声で言った。


「はい。じゃ、次ー」


 ザ・パーフェクトは抑揚なくそう言った。


「ちょっと! じゃ、で流さないでよ。もっとジーンときて欲しいさ」

「わかった。では今の格言、何点でしょうか!」

「点数つけないでよ。低くなったら嫌だよ。ウーバー・ワンにも失礼さ」


 ラック・ザ・リバースマンとザ・パーフェクトのやりとりは周囲の笑いを呼んだ。


 この仲間との時間は、きっともう最後になる。

 そのことは誰も口にしなかった。


「あ、あの。……ガーディアンズ・オブ・トゥモロウ!」

「なにそれ、ウケる。バニちゃん。いきなりやらないでよぉ。そういうのせ~の! で皆でやった方が絶対いいって」

「あ、はい。すみません」


 やりとりを見守ってローゼン・カメリア・サニーサイド・スマイリング・ブレイク・アロー・ウーマンは言った。


「ねぇ、みんなで写真撮りましょう。ガーディアンズ・オブ・トゥモロウ! で」

「フッ……。まったく物好きな奴らだぜ」

「いいね」

「うち、そういうのあると思ってオモシロ珍グッズ持ってきたんだよ」


 皆で一列に並び、サンシャイン・ダイナがカメラのタイマーをセットして駆け寄る。


 あっと声を上げる前に、彼女は床に散らばった紙屑に足を滑らせた。


 結局、全員で写った最後の写真は、半壊し、鎮火したものの煙がまだ燻る建物の前で、ラック・ザ・リバースマン以外は傷まみれのものとなった。

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