第28話
真顔の反骨とは超本営所属の特殊能力者に対する反発思想だった。
それは個人や集団の名称ではなく、ある種のアイコンのようなものとされている。
超本営所属以外の特殊能力者、そして一般人たちの中で自然発生的に湧き上がった過激な思想だ。
口コミで、またはネットのクローズドなやり取りで徐々に広がっていた。
元々、特殊能力者に対する嫉妬や僻みはないわけではなかった。
任務の成功率も100%でない限り、どこかで涙を流す被害者もいる。
社会の不安に対するやり場のない感情は、わかりやすい敵を求める。
そう言ったものだと言われていた。
さらには、超本営の存在自体がこの国の悪事を隠すための目くらましだという噂まで吹聴され始めていた。
具体的な組織があるわけではなかった。
しかし犯罪を犯す者たちの中で自らを『真顔の反骨』の一員であると名乗る者たちの数は無視できないほどになってきた。
思想を弾圧するということはできない。
感化された者も、犯罪を犯さない限りは取り締まるすべはない。
多くの者たちは普通に生活をし、そして少しずつ少しずつ、金属が腐食していくようにその思想に馴染んでいった。
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