第4話 出会い

 商店街に戻り歩いて行く。モンスターを倒すと、経験値と同時に金貨ももらえる。俺は100枚ほど稼いできた。


 うーん、まずは武器のグレードアップが必要だな……これは武器屋ができる……はず。


 武器のグレードアップとは今あるアインソードのATKが上がること。


≪武器屋 ギース≫という看板があった。


 あ、あれ~?聞いたことがあるな~。確か、草原に向かったり、クリエ、いや、託が起こしたことを知る前の時、雑貨店の……


 武器屋ギースの隣に雑貨店ギースが。看板は雑貨店ギースのほうが大きく、最初気づかなかったことに納得した。


 一応、入ってみるか……


 俺は武器屋ギースのドアを開ける。するとカウンターの奥からエミが走ってこちらに来た。


「いらっしゃいま……あ!!!サクトさん!!」


 俺を指さしながら言う。


「よぉ。いや、お前、武器屋もしてるのか?」


「はい!雑貨店、武器屋、装備店の3つを経営しています!!すべて名前はギースですよ!?覚えて帰ってください!!」


 すげ~……スタミナどうなってんだろう……働きすぎて倒れなければいいんだけど。それよりも武器のグループ。


「この店は武器のグレードアップはしているか?」


 エミは瞬時に「ありますよ」と返事をする。俺はそれに少し戸惑ったが、また話を始めた。


「それでこれをグレードアップして欲しいんだ」


 アイテムストレージを開き、アインソードを押し、オブジェクト化する。そしてカウンターに置く。エミは剣を見て、「ちょっと待っていてください」と言い、店の奥へ行った。


 金貨はどれくらいだろう……正直10枚を推測しているんだが……


「アインソードをグレードアップの件ですが、3つのルートを選んでください!それによってこの剣の性能などいろいろ変わってきますよ?」


「ルート――――?」


「まあ、決めてください。まず1つ目、『クライアットソード』。速さ重視の剣ですね。2つ目、『アスカロン』。攻撃力重視の剣です。そして最後の3つ目、『アロンダイト』。アインソードの性能全体を上げます。どれがいいですか?」


 クライアットソードか……速さ重視。俺は重いのは嫌だけれど軽すぎなのもな……アスカロン、攻撃重視。確かにな~、いいけど。あとアロンダイト……うーん。


「剣売ってないか?」


「あ、ありますけど……グレードアップは?」


「一旦見せてくれ」


 驚きながらも「はい」と返事をし、剣を取ってカウンターに置いていく。全部で5つ置かれた。


「まず1つ目」


 エミが手に取ったのは白い剣。この剣の名前は『アベリア』と言い、リーチが長く少し重い。試しに持ってみるが持てなくはない重さ。


「2つ目」


 そう言って次は赤色の剣を手に持つ。『アルストロメリア』と言い、リーチはアベリアと同じで長く、重さは重い。スキルのシステムモーションの持続効果があり、スキルを2連続使える剣らしい。俺が持ってみるとアベリアよりかは軽く振りやすい感じ。


「3つ目」


 次も赤色の剣だが少しアルストロメリアよりも濃い赤。名前は『インパチェンス』。スキルの効果を高める剣らしい。リーチはアベリアやアルストロメリアよりも少し短く重さは軽い。振ってみると速く目標めがけて斬れる。そんな感じがした。


「4つ目」


 次にとったのは黄色、いや、金色の剣。名前は『ヒペリカム』。アインソードの性能を上げた感じ。リーチ重さともにアインソードと同じ。振ってみても変わらない感覚。


「これで最後!」


 最後、手に取ったのは『アルメリア』。紫、濃い紫色の剣。エミによるとこの剣は扱いずらい剣らしく、けれど扱うことさえできれば物凄く強い剣らしい。リーチは長く、重くはない。持ってみると振りやすくスキルも瞬時に出てくる。


「どれもいいな。まず最後のは買うよ」


 エミは驚いた表情でこちらを見た。


「扱いずらい剣なんですよ!?安全面を考えて他の剣やアインソードのグレードアップをしては……」


「まあいいだろ?挑戦してみたいんだしさ」


 ため息をつきながらエミが言った。


「それで?まず買うってことはまだ剣を買うんですか?」


 俺は「ああそうだ」と言い剣をもう1度順に持っていく。


 性能としてはアルメリアがいいんだけど……なんかこれが気になって仕方がないな~。


 そう思いながらヒペリカムを見つめる。何かこの剣が呼んでいる、そんな気がした。数十秒見つめた後俺は決めた。


「よし!!これにするよ!」


 またエミは驚いた表情でこちらを見る。


「ま、まさか……ニ刀流をする気ですか!?」


 当然な顔をして俺はうなずく。


「いやいや無理ですよ!システムのモーションを制御するのは難しいし力が最大限出るとも限りませんよ!?」


 そ、そうだったのか……知らなかったな……でも、今、魔法が使えない以上、こうしたほうが戦いを有利に進めそうなんだ。これにしてみないと。


 真剣な顔でエミに言った。


「この2つを買う。アインソードは売却だ」


 呆れた顔をしたが俺の真剣な顔を見た後、「分かりました」と言い、他の剣を片付け始め、終わった後カウンターに来て、金貨の枚数を言われた。


「アルメリアが金貨47枚。ヒペリカムが金貨51枚。2つ合計で98枚となり、そしてアインソードを売却が4枚。なので金貨94枚となります!!!」


 お金の値段が高いからか、エミは上機嫌になっている。俺はエミの機嫌は気にせず金貨をちょうど94枚カウンターに出し、鞘を背中に交差する感じで2つ装備するよう設定する。


「ちょうどな」


「ありがとうございました!!」


 剣を鞘に入れ俺はドアを開けた。



 商店街を歩いていろんな店を見ていると男たちに絡まれている女子の姿があった。


「なあ俺たちとパーティー組まないか?楽しいぞ?」


「そうだぞ~!さあ!!」


「さあ!!」


 1人の男が彼女の手をつかみ連れて行こうとする。


「やめてください!!」


 男の数は3人。全員黒い服を着ている。俺はすぐに彼女をつかんでいる手を持つ。


「やめてあげろお前ら。嫌がってるだろ」


 彼女の腕を取り、背後に来るよう引っ張る。


「なんだ?なあ兄ちゃん。そこの女をこっちに渡したら殺さないでやるぜ?」


 剣をオブジェクト化し俺の目の前に突き出す。他の2人も剣を手に持ち、戦闘準備を始めている。町内ではあまり戦闘はするなとなっているが、こいつらはお構いなし。


「うるさいな、剣をしまえ、で、さっさと攻略でもしてろよ」


 男たちは眉間にしわを寄せ、怒りをぶつけるように言う。


「なんだと!?じゃあ死ね!!!」


 スキルも何も使わず斬りかかってきた。


 なんだこいつ。スキルくらいは使ってほしかったんだけど……俺、いつの間にか強くなったのかもな。


 俺は男が振り落とした剣を避け、彼女を後ろに下がるよう指示を出す。残り2人も斬りかかってきた。今回はスキルを使っている。どちらもソードスキル、ウェルトを使い直線に斬りかかる。俺は鞘からアルメリアを手に取り、ソードスキル、『ブロックソード』。ギーっと剣と剣が擦れ合う効果音が響き渡る。


「俺はもうレベルは上げている。たぶんお前たちより20は違うんじゃないのかな?」


「はぁ~!!!なめた口しやがって!!!」


 男は後ろに下がり、態勢を立て直す。そして3人同時にこちらに向かって斬りかかってきた。その時、背後にいた彼女が俺の服を引っ張り、武器屋ギースへ飛び込む。ドアを壊しながら。


「きゃぁぁぁ!!!!な、なんですか!?」


 エミがカウンターからひょこっと顔だけ出してこちらを見る。


「す、すまん……今ちょっとわけがありまして……」


 男が3人こちらをにらむ。


「ちっ。帰るぞ」


 急に男3人はどこかに行った。1人は俺が見えなくなるまでにらみながら歩いて行く。


「なんであいつら帰ったんだ?」


「店の中はユーザーキルができないんです」


 エミがそう言った。彼女はそれを知らずにイチかバチか飛び込んだらしい。


 まあ、良かったってことか……HPゲージはそこまで減らなかった。


「大丈夫か?」


 俺は立ち上がった後、彼女に手を差し伸べる。彼女は俺の手を取り、ゆっくり立ち上がった。そして笑顔で「ありがとう」と言った。


 俺はこの笑顔を忘れないかもな。助けてこんな笑顔を見せてくれるなんて。


「じゃあ、俺はもう行くよ。エミ?フレンド登録いいか?」


「どうしてですか?」


「いや、ドアの修理代を払う時にメッセージを送ろうと思ってな。今は金がない」


 フレンド登録の設定をして、エミの目の前に【フレンド申請が届きました。承認しますか?】と文字が表示され【Yes/No】の選択画面が表示される。エミは戸惑いながらもYesのボタンを押す。急に喜びが表情に出ていた。


「何喜んでるんだ?」


 おろおろしながらも横に首を振る。


「そうか?まあ、いいけど」


 すると彼女が俺の腕をつかむ。何も言わないけれど何かを頼んでいるかのように。俺が「どうした?」と聞くとエミを指さす。


「エミがどうしたんだ?」


「いや……フレンド……登録……してほし……いです……」


 小さい声でぼそりと言う。俺がもう1度聞きなおすと顔を赤くして武器屋を飛び出していった。エミは「可哀そうですよ~?」と笑いを浮かべながら言った。


「はぁ……女子との関係があまりないからな……お前くらいかもしれないぞ?ちゃんと普通に話せるのは……」


「ぷっ!え~!!そうなんですか~!?てっきり友達たくさんだと思ったんですけどね」


 エミはお腹を押さえながら笑った。


 高校では男友達が2人くらい………少ない。こうエミと話せるのが本当に不思議なのだ。


「うるさいな!!もう行くからな?」


「はい!ありがとうございました!」


 ドアが壊れて地面にある木を避けながら、外に出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る