第16話 転勤
2月――
奈々は普段どおりに授業を行い家に帰る生活をしていた。
変わったのは先生に会わなくなったこと
大学時代の友達とも会わなくなったこと
とにかく今目の前にある仕事をこなすことを
受験生たちができるだけ合格できるように自分が授業することだけを考えていた。
「早瀬先生、ちょっと。」
「はい。」
綾部先生の後任の塾長に呼ばれた。
「え?どういうことですか?」
「うん。すごく中途半端な時期なんだけど、化学の先生がいなくなったみたいで、後任が見つからないみたいなんだ…だから北海道に早瀬先生がいけないかって本社から言われているんだけど…どう?」
「本社…」
本社なら先生も知っての判断なのだろう。
「三年生が気がかりです…」
「そうだよな~なんでこんな時期に…しかも北海道なんて遠いよな。」
「塾長!それ本当ですか!?」
林先生が話を割って入ってきた。
「こんな時期におかしいよ!早瀬先生だってそう思うだろ?」
林先生は私と先生が色々あったから、私を遠ざたいからそういう辞令がきたのではないかと思っているのだろう。
私もそう思った。
でも先生がそういう風に命令するなら、私もこの土地を離れたほうが気が楽になるかもと思った。
ここにいたら、安奈と先生のツーショットを見ることになる可能性が高い。
それならいっそ知らない土地で一からがんばったほうがいい。
「行きます、私。」
「いいのかよ、それで!言いなりみたいじゃねぇか!お前がいえないなら俺が言ってくる!」
「いいの!林先生、ありがとう。私、むしろ行きたいって思ってる。」
「知らない土地で一から頑張ってみるよ。」
「なんか、俺の知ってる早瀬じゃないみたい。」
「え?そう?」
「なんか強いって感じ。」
「もう私には失うものがないから。」
「大食いの早瀬先生には北海道合うかもしれないね。」
「ふふ、そうかも。」
「いつから北海道ですか?」
「それがこれも急で来週からって…」
「じゃあ送別会もできないねぇじゃん!」
「いいよいいよ、今みんな忙しい時期だし。」
「でも…」
「じゃあ夏か冬戻ってくるからその時に…」
「あんまり食べ過ぎんなよ!」
そういわれて背中を林先生は押してくれた。
そうだ、新しいスタートをきるんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます