旅と仲間と妖精と
@yahayaha
第1話 妖精と旅と始まりと
暗い森の中を進む生き物がいた。それは風が吹けば近くの物にがみつき、はたまた風に身を任せ歩き出す。目的地などがあるわけでもなくただただ彷徨っていた。
この暗闇なのかで誰かと共にするわけでもなく、静まり返った道なき道を、時折聞こえる生き物のうめき声を聞きながら、つまらなそうな或いは悲しそうな顔を浮かべて。
それでもそれは歩み続けた少し先にある暖かな光に向かって。
「だ~~、やっと森を抜けれたわ。さすがに死ぬかと思ったわよ。」
ちなみに今抜けてきたのは魔の森と呼ばれている。過去の大戦のなごりらしい。
ここに自生している植物などには人体に影響があるものが多く、ひとだび踏み込むとと有害な瘴気に侵され正気を失い、ここを住み家としている魔獣の餌食となってしまう。
そんな森だ。そのためこの森には誰もも立ち寄ったりはしないし、ましてや単身で乗り込んでいい場所ではない。
何の装備もなく森を抜けることは不可能と言われ、普通ならそんな無計画なことはしないし、やったら確実にあちらの世界へと旅立ってしまうような場所だ。
そんな危険な森をなぜ彷徨っていたのか。
なぜ一人で。
決してボッチだった訳ではない。
たしかに周りから浮いてはいたが・・・。
このかわいそうな生き物は周りの制止を振り切って単身で乗り込んできたのだ。
「お前やばいってさすがに。」
「そうだよ無茶だよ。」
「それにみんなに知れたら大変だよ。」
などなど、心配の声が多数あったのだがこの生き物は何を思ったのか。
「いけるわよ。わたしなら楽勝よ。」
などという訳のわからない理由から周りの制止を振り切って、出発した身であるから目の当てようがない。
ちなみに出発してからすでに30日以上は彷徨いるのである。
普通ならばとっくにあっちの世界へと旅立っているのだが、そこはそれ種族特有のものが大きい。
可愛らしい顔に小さな体、蝶の様な羽、妖精族。
妖精族は魔力をエネルギーとしていたため、食事などの心配は無用、だが森の生き物には妖精を察知するものがいるらしく、過去に少なくない被害も出ている。
時を遡ればなにか悪戯があればそこに妖精ありと言われたほどの悪戯好き。
悪戯といっても、危害を加えるのではなく、他人が聞けば失笑はたまた爆笑する程度のことだ。
そんな可愛らし種族なのだが、ターゲットを絞って悪戯をするのだからたちが悪い。
ここで不運にも過去に被害にあっってしまった少年ジャン君の例を挙げよう。
彼の朝は優雅なティータイムから始まる。
「ふっ、朝はこの時間から始まるのさっ。」
「ブフ~~ッ。」
「プーー。クスクス。」
どうやら彼の砂糖ビンの中身は砂糖と塩が入れ替えられていたようだ。
はたまた、彼は周囲の女の子にシェフのお弁当を自慢しようとしていた時に。
「どうだい見てくれよ。わが家の自慢のシェフの腕前をっ。」
「い~なぁ~。私の家にもお金があればな~」
「私なんて朝起きて自分で作ってるのに。」
「まぁまぁ。君たちにも食べさせてあげるから。」
だが満を持して蓋を開けてみると、その中身は豪華な食材をふんだんに使ったいつもの料理ではなく、無駄に大きな弁当箱の中心に、なにを具材にしたかわからないが、自分の顔をモチーフとしたなにかが存在していた。
しかも、わざわざその顔の部分の下に海苔で書かれた、おそらくここに一番時間を掛けたであろう。
【 お坊ちゃま~~ん by作者 私 】
という文字が異様にその存在感を示していた。。
「・・・あっ、あれっ?」
「・・・・・」
「ギャハハハハ。似てる似てるwww。」
「さすがお坊ちゃまwww」
「ちっ、違うんだよこれは、なにかの間違いだ~~間違いだ~~。」
「プーー。どうよ私特製のお坊ちゃま弁当はっ。わっはっは。」
お坊ちゃまが必死に言い訳をしている間にも、この妖精は自分の腰に手を当て、満足そうにうなずいていた。
どうやらこの妖精は、わざわざ早起きしてお弁当を作り、こっそりと入れ替えていたようだ。
などなど満足するるまで悪戯は行われ、次のターゲットへと乗り換えていくのであった。
そんな悪戯大好きで、なかなか姿を現さない妖精も大戦後なりを潜めてしまった。
余談だが妖精のイタズラがなくなったため、落胆したコアなファンもいたとかいないとか。
話しを戻そう。
当然無計画に出発したのだから一人旅が上手くいくわけもなく、天敵である魔獣に幾度となく襲われたが、隠れたり、飛び込んだり、隠れたりとなんとかやり過ごしたようだ。
しかしやり過ごしたものの、計画があったわけでもないため。
「ふっ、さすが私。追いかけられた時はどうなるかと思ったけど、まっこれが私の実力ね。」
としばらく自画自賛にひたっていたが、
「・・・」
「さて思いつきで飛び出してきたはいいものの。・・・これから何をしよう。」
森の中で仲間の妖精と暮らしていたため、話で聞く以外はほかの種族と話したことも、会ったこともない。
そもそも森の外に出ること自体が異例中の異例なのだ。
そんななかで何も考えずに出発したのだから計画もなにもあったものではいのだが。
「むむむむむ・・・」
「やばい、なにも思いつかない・・・。」
「あ゛~~~。」
「・・・」
どうやら本気で考えているようで、それはもう真剣に考えている素振りを見せていたのだが、それも束の間、次の瞬間。
「まいっか。歩きながら考えよ。なんか思いつくでしょ。」
本当に残念な妖精だ。
本当に目も当てられないがこの妖精の旅はまだ始まったばかり、さてさてこれからどんな旅になるのだろうか。
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