夜が明けるまで、私と
武田修一
夜はそこにある
「夜が明けるまで、私と」
踊ってよ、と彼女は言う。差しのばされた手を取ろうとするけれど、彼女は人工知能であり、現実感のあるものではなかったので、伸ばした手は当然のごとくディスプレイに当たった。彼女は悲しそうな顔で笑う、その表情もよくできている。まるで感情が存在していて、そういう人間がいるかのようだというのに。
彼女は学習を繰り返して、知識を人よりも多く摂取して、人のかたちを得て、人の感情を摂取して、そうして今の彼女になった。だけど、いくら技術が進歩しようとも、彼女はディスプレイの向こうからこちらに来られない。
――――誰もしないのなら、僕がやる。
そう決意して、一年が経っていた。未だに彼女はディスプレイの向こう側にいる。
「ねえ、踊って」
彼女は悲しそうに笑って、僕に訴えかけてくるのだ。
そばには、彼女の外側となる
そうすれば、僕は彼女と踊ることができる。ああ、その日が待ち遠しい。
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