3.仲間
「ラルフ、本当にこんなところに宿舎があるのか?」
「へい、ディルの旦那。もう少しで到着しやす」
戦士ラルフに案内され、俺は町の外まで来ていた。もうすぐ日が暮れそうだっていうのに、人里から離れていくばかりだ。やはりこの先に盗賊団のアジトでもあるんだろう。
俺は盗賊たちとの戦闘を頭の中でシミュレーションしていた。召喚術を使ったあとが大事になってくるな。相手が複数いた場合、倒しきれない可能性も出てくるので、一旦逃げるか隠れる必要があるからだ。
「……」
俺はラルフに怪しまれないよう、密かに視線をばら撒くようにして周囲の光景を目に焼き付けておく。
かなり薄暗くなってきたものの、まだなんとかわかる程度だから問題ない。それに相手が視力抜群なモンスターでもない限り、この暗さは逃げるときにも役立つからな。
「――着きやしたぜ、ディルの旦那」
「そ、そうか……」
そこは茂みや木々に隠れるように存在する洞窟で、ガタイのいいラルフがすんなりと中へ入っていけるほど入口は広かった。
なんだかぼんやりと明かりが見えるし、この先に盗賊団のアジトがあるんだろう。よーし、まとめて一網打尽にしてやる。とはいえ、挟撃される恐れもあるので俺は男との距離を一定以上保ちつつ、慎重にあとを追った。
「この奥にあっしの仲間がおりやす」
「……」
さあて、どうなることやら。案内人からしてこの風貌だし、一体どんな凶悪な面した野郎どもが巣に集まってるのか今から楽しみになってきた……。
「――おーい、連れてきたぞ!」
「「「おおっ!」」」
「……ん?」
なんだ? 狭い通路から広い空間に出た途端、ラルフが叫んだかと思うと黄色い歓声が響き渡り、三人の人物が姿を現わした。
いかにも人懐っこい笑みを湛えたお下げ髪のろりろり幼女、聖女のような神々しい雰囲気を持つおっとりとしたロングヘアの女性、いたずらな空気を醸し出す快活そうなミドルヘアの少女……って、こいつら本当に盗賊なのか?
まさか……そうか、あれか。まず油断させておいて一気に仕掛けてくるつもりなのか。
もしそうなら確かに気が緩んだし、盗賊のくせに結構考えてるなと思うが、ちとわざとらしすぎるのが運の尽きだったな。そもそもこっちは盗賊の巣に単独で乗り込んでるんだから油断なんかするわけないだろうと。
「わー、新しい召喚術師様だぁ。よろしくっ」
「まあ、召喚術師様、よくお越しくださいました。よろしくです……」
「すごっ、召喚術師様、よろしくなのー!」
「よ、よろしく……?」
幼女、聖女、少女……個性的な美少女たちからそれぞれ好意的に挨拶されたもんだから、ついよろしくと返してしまった。いかんいかん、騙されるな、備えろ、こいつらは敵だ、盗賊どもの手先なんだ……。
「おいおい、お前ら、あれを忘れてないか?」
「「「あっ……」」」
「……」
ラルフの一声で少女たちの顔色が変わる。なるほど、おそらくあれっていうのは攻撃の合図で、こう見えて実は凶悪人物という落ちか。いかにも弱そうだったし、油断させるために用意された遊女的な役割だと思ってただけに意外だった。
だとすると、彼女たちは見た目に反して割りと手強い相手なのかもしれない。俺は杖をぐっと握りしめる。さあ、来い。相手が女子供だろうと容赦はせんぞ……。
「わたしはね、魔法使いのリゼっていうんだよぉ」
「わたくし、僧侶のルリアと申します」
「あたし、剣士のレニー!」
「あ、ああ、俺は召喚術師のディル……」
って、あれ? 自己紹介だと? なんか思い描いてた展開とかなり違うような……。
「さあ、ディル様はお疲れだ。早速お部屋に案内してやれ」
「「「はーい!」」」
「ちょっ……!?」
俺はこの子たちから背中を押されるようにして奥へと進まされていた。殺気とか感じるわけでもないし、一体何がどうなってるんだか……。
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