先輩の思考が読めない
知育菓子の粉
プロローグ
ある秋の日の放課後、少し日が傾いて薄暗くなっている学校に一人の青年が胸の高鳴りを押さえながら、教室の扉を開ける。青年は教室へと足を踏み入れると、ぎこちない歩き方で本を片手に佇む黒髪ロングヘアーの似合う美しい一人の女性へと近づき挨拶をする。
「こ、こんにちわ。先輩」
「あら、こんにちわ。意外と早く来たわね」
彼女は目の前にいる青年に気付くと挨拶をして、本を閉じると鞄にしまった。そして青年の方を向くと真剣な顔で質問をする。
「貴方はなぜここへ呼ばれたかわかるかしら?」
「わかりません。なぜ呼んだんですか?」
青年は少し震えた声でそう答えた。彼女はその様子を気に留めることなく青年の質問に答える。
「そう、じゃあなんで呼んだか言うわね。一度しか言わないからよく聞いて」
「……はい」
窓から吹き込む風が彼女の髪を靡かせる。彼女の顔が赤く染められているように見えた。日が差し込み頬が赤く照らされているのか、それとも。
「私、貴方のことを――」
彼女の口から言葉が告げられる。緊張からか、それとも別の何かなのか、胸の高鳴りを感じる。彼女の口から出る言葉はきっと告白なのだろうと確信して喉を鳴らす。
「私、貴方のことを――振りたいの」
「はい! もちろん! ……って、え?」
青年は何を言われたのかわからないような顔で彼女へ視線を向ける。すると彼女は少し微笑み。
「やっぱり貴方なら快諾してくれると思っていたわ。明日の放課後校舎裏でね」
そう言って鞄を持って教室を後にする。その様子を見ていた青年は石のように固まって動かず混乱しているようだった。。暫くすると、納得のいかないような顔になり、小さく「今日はもう……寝よう」と呟いて教室を後にする。
先輩の思考が読めない 知育菓子の粉 @chikugashinokona
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