第20話 じゅうじんを なかまにしますか?
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屋敷を襲ったことによって、これで俺たちは完全にブラムゴンと敵対したことになる。
遅くないうちに、ブラムゴンが村を襲撃しに来るだろう。
ヤツは狡猾な魔族だ。
多分1匹だけじゃない。
徒党を組んで、襲いかかってくるはずである。
だが、はっきり言って今の村に防衛力は皆無だ。
それに魔蛙族の跳躍力は、魔族の中でも郡を抜いている。
どんなに高い城壁を作っても、突破してくるだろう。
だから、俺が考えた方針は……。
「迎え討つ!」
俺が力説すると、聞いていた村人たちはどよめいた。
ほとんどの村人が動揺している。
魔蛙族の大軍を籠城せずに迎え討つのだ。
そりゃ驚くよな。
といっても、魔蛙族に籠城戦は無駄なのは皆もわかっている。
問題なのは……。
「攻撃力じゃな」
ソンチョーが指摘した。
そうなんだよな。
圧倒的に戦力が足りてない。
攻撃系のスキルやジョブを持つのは、今のところルナ、チッタ、ソンチョー、カーチャぐらいだ。
他の村人は後方支援や生活系のスキルやジョブしか持っていない。
レベルを上げれば、基礎能力が高まるが、時間が圧倒的に足りていなかった。
ルナの前では馬鹿にしたが、ブラムゴンのステータスはかなり高い。
名前 : ブラムゴン
レベル : 6/6
力 : 121
魔力 : 55
体力 : 200
素早さ : 185
耐久力 : 153
ジョブ : なし
スキル : 大跳躍LV5 毒吐きLV5
なんと言っても、体力と耐久力の高さだろう。
大岩の下敷きになっても、海を渡るほどの体力が残っていたのだ。
ルナやチッタでも攻撃はほとんど通らない。
村で一番の攻撃力を誇るソンチョーでやっとといったところだろう。
「加えて力も強いし、何より魔蛙族は素早い。ブラムゴン以外の魔蛙族の能力も似たりよったりのはずじゃろう。一斉に襲いかかられれば、一溜まりもないぞ」
昔、剣士だっただけあって、ソンチョーの目は確かだ。
ますます不利な状況を聞いて、村人たちの顔がいよいよ青くなる。
「迎え討つ場所は、魔の森にしようかと思ってる。ここなら魔蛙族の機動力も封じることができるはずだ。ドリアードも手伝ってくれると言ってくれているしな」
『あそこでならば、私の能力もお役に立てるでしょう』
「「「「おお……」」」」
1つ安心できる材料ができて、村人たちは安堵する。
だが、魔蛙族を討伐できる戦力については、何も解決していない。
そこで俺はある解決策を提案した。
「獣人族に手伝ってもらう」
再び村人たちはどよめいた。
「獣人族か」
「案としては悪くないが……」
「獣人たちとの交流がなくなって、もう50年以上経っている」
「果たして、我らに手を貸して貰えるか」
「もらえるさ」
俺が断言すると、皆が沈みきった顔を上げた。
そのまま俺は話を続ける。
「彼らだって、暗黒大陸の住人だよ。きっと話せばわかってくれるはずだ」
この俺の一言が決定打となり、俺たちは獣人族たちの住み処へと向かうこととなった。
◆◇◆◇◆
「あれが獣人たちの住み処か……」
魔の森とは反対方向。
村の南に広がる山野に、俺たちの姿があった。
俺は山肌にぽっかりと開いた洞穴を見つける。
同行したルナとチッタも、岩から顔を出して様子を窺った。
「ここまで何事もなく進むことができましたね、ダイチ様」
「ああ……」
獣人たちはとても警戒心が強いと聞いている。
五感の能力が人族よりも優れているから、住み処に近づくものをすぐに見つけることができるそうだ。
「ステノのおかげだな」
「そ、そんな……」
もう1人の同行者ステノは頬を染める。
スキル『気配遮断』。
こうして実地で体験するのは初めてだが、かなり便利な能力だ。
ステノをうまく育成できれば、アサシンプレイもできるかも。
背後からグサリって感じで。
…………。
ちょっと想像すると怖いけど……。
「むぅ……。ステノばかり褒めて」
頬を膨らませたのは、ルナだった。
その頭をそっと撫でてやる。
「ごめんごめん、ルナ。大丈夫、これから活躍してもらうから」
「はい。任せてください」
『キィ!』
「ああ。チッタにも活躍してもらうよ。でも、まだその姿でね」
『キィ!』
俺はもう1度住み処の入口を覗き込む。
歩哨が2人立っていた。
頭に犬の耳を生やした男たちが、鋭い視線を光らせている。
「犬獣族ですね。耳と鼻がとても鋭いんです。力も強いですよ」
ルナは教えてくれる。
なるほど。
獣人になっても、その能力は健在か。
警察犬になるぐらいだからな。
見張りにはもってこいってわけだ。
「よし、ステノ。『気配遮断』を切って」
「いいんですか? 見つかっちゃいますよ」
「ここまでで十分だよ。俺たちは話し合いに来たんだ。話し合い相手が見えないんじゃ、余計に警戒させるだけだろ」
「大丈夫、ステノ。何かあったら、わたしとチッタが守るから」
『キィ!』
ルナとチッタの頼もしい声を聞いたステノは頷く。
『気配遮断』を切った。
その瞬間、歩哨の犬獣族が気付く。
何者だといって、牙を剥きだした。
「待ってくれ! 俺たちは敵じゃない」
俺たちは手を上げて、岩陰から現れる。
「人族?」
「なんでこんなところに?」
犬獣族は動揺していた。
本来なら外敵が現れたことを知らせるルーティンが組まれているだろう。
それをしなかったのは、突然俺たちが目の前に現れたからだ。
「話し合いに来た。族長と合わせてくれ」
俺が頼むと、入口の向こうで影が飛び出した。
一直線に俺の方に向かってやってくる。
気付いた時には、鋭い爪が俺に向かって振り下ろされようとしていた。
「ダイチ様!!」
影の横から飛び出したのはルナだ。
素早い動きに反応し、組み伏せる。
その姿を見て、俺とルナは同時に驚いた。
「「女の子?」」
ルナと同い年ぐらいだろうか。
ピンと立った豹柄の耳と、黄金色の髪。
ビキニのような面積の少ない衣服の下には、真っ白肌が輝いている。
長い尻尾をピンと立て、橙色の目を憎々しげに侵入者である俺たちに向けられていた。
姿形からして豹。豹の獣人だ。
「「ミャア様!!」」
声を上げたのは、犬獣族の歩哨だ。
ミャアって呼ばれているのか。
名前があるってことは、獣人族の中の有力者なのかもしれない。
一方、ミャアとルナは両手を組み、押し合いをしていた。
下になったミャアは、大きな肉球がついた手でルナを押し返そうとする。
ルナも負けていない。
懸命に力を振るい、ミャアを押し返す。
「すごい……」
「あの娘、ミャア様に負けてないぞ」
犬獣族たちは驚いている。
俺も驚いていた。
ルナのレベルは20を越えている。
その力の強さは、一般人の10倍以上だ。
なのに、決してミャアも負けていなかった。
すごい。すごいぞ……。
獣人族はおそらく力に特化した種族なのだろう。
これで育成したら、どれぐらい強くなるのか。
いや、それよりもミャアを育てることができれば、対魔蛙族の切り札になるはず。
「お前……。何者だ! ミャアと互角なんて」
「あなたこそ、何をするんですか。ダイチ様は話し合いに来たんですよ」
「ダイチ? まさかあいつが大魔王か?」
俺を知っているのか。
「ルナ。離してあげて」
「でも……」
「大丈夫だから」
そっとルナはミャアから離れる。
ミャアはピョンと跳ねるように1度退いた。
「何しにきた、大魔王ダイチ?」
「俺の要求はただ1つだ」
ミャア! 君がほしい…………!!
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ド●ンかな……?
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