第15.5話 けんごう あらわれる

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PVも過去最高になりました。1000pvまであとちょっと!

更新頑張ります!


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 屋敷襲撃する3日前。

 俺は村人全員に【言霊ネイムド】を使って、名前を与えた。

 すべてのステータスを調べ上げ、屋敷に襲撃する時の人選を練る。


 その中で、今回連れてきた5人は、今1番の精鋭部隊だ。


 ステノの『気配遮断』スキルは、かなりレアだ。

 実は、このスキルは2段階目。

 『無音移動』というスキルの派生である。

 それをステノはレベル1から覚えていた。


 本人もやる気があって、5人の中で1番レベル高いのはその証と言えるだろう。


 カーチャの『必中』もレアスキルの1つだ。

 これも2段階目で、『狙う』の派生スキルである。

 本人は家で料理していた方が気が楽だと言うが、度胸も思い切りもいい。

 鍛えれば、優秀な射手になるだろう。


 アバカムとトレジャーの兄弟のスキル――『解錠』と『金属探知』も、レアスキルだ。

 あまりレベルを上げることには興味がないみたいだけど、スキルの向上は目覚ましい。

 今回屋敷に侵入するための要になってもらったが、ゆくゆくはダンジョン探索をになってもらうことも考えている。

 将来が楽しみだ。


 いずれも優秀な人材である。

 けれど、ルナやチッタほどではない。

 彼らがSSR、星5、スーパーな人材とするならば、4人はレアキャラってところだろう。

 やはりジョブがないのが、俺の評価を辛くしているポイントだ。


 もちろん育成すれば強くなれると俺は信じている。

 さらにレアスキルを覚えて、段階を上げていけば化ける可能性はあるだろう。

 だから、俺はあまり残念には思っていない。


 けれど、今ほしいのは即戦力だ。

 ルナやチッタほどではないにしろ、せめてスーパーレアな人材がほしい。


 一縷の望みをかけて、俺は最後にある人物に名前を与えた。



 その名はソンチョーだ。



 ◆◇◆◇◆



「なんだ、爺さん? 便所か?」


 首無し騎士は目を細める。

 頭を小脇に抱え、片方に持った剣の先を突然現れた村の村長ソンチョーに向けた。


 50人も一気に名前を付けたから、割と後の方の名前がおざなりになってしまったのだけど、我ながらややこしい名前を付けてしまったものだ。

 本人は割と気に入ってるみたいだから良かったけど。


 そのソンチョーはニヤリと笑う。


「実は最近トイレが近くての――――って、何を言わせるのじゃ!!」


 し~~~~ん。


 の、ノリツッコミだぁぁぁぁあああ。

 しかも、若干――いや、かなり滑ってるし。


 ソンチョーはこほんと咳払いをした。

 ごめん。ソンチョー、咳をしたところで地に落ちた威厳は元に戻らないからな。


「ぷっ! あはははは。ソンチョー、面白い!」


 ルナが肩を震わせて、笑い出す。

 ルナの笑いのつぼって一体……。


「ふざけてんのか、てめぇら?」


 一方、デュラの方はお冠だ。

 鎧が真っ赤になって怒ることはなかったが、地団駄を踏む。

 改めて、ソンチョーに向かって剣を向けた。


 だが、ソンチョーは余裕だ。

 年の功というヤツだろうか。

 随分と落ち着いている。

 やがてソンチョーは屋敷から拝借してきたと思われる剣を掲げた。

 鞘に収めたまま腰を落とす。


「ふざけているかどうかは、お主のなまくらな剣に聞いてみればよかろう」


 お、おお……。

 なんかソンチョー、雰囲気あるなあ。

 けど、そんなに挑発して本当に大丈夫だろうか。


「ソンチョーさん、大丈夫でしょうか?」


 ルナは心配そうに見つめる。


「だ、大丈夫だ」


 いや、信じろ。

 ソンチョーならやってくれる。

 何故ならソンチョーは――――。


「おおおおおおおおおおお!!」

「ぬおおおおおおおおおお!!」


 2人の剣士は同時に走り出す。

 一方、首無し騎士。

 もう片方は、齢60の村の村長。

 互いのプライドをかけてといえば、大げさだが、村の存亡がかかっていることは間違いない。


「くらええええええええええええええ!!」


 デュラの刃が光る。

 スキル『全力斬り』を発動させたのだ。


 走りながら、ソンチョーも柄に手を置く。

 そのソンチョーの頭の上に、デュラの剣が振り下ろされた。

 俺はぞっと背筋が凍る。

 一瞬、走馬燈のようにソンチョーが敗北する姿が浮かんだ。


「ソンチョー!!」


 だが――――。

 振り下ろされた刹那の時間の中で、ソンチョーは口角を上げる。


「先に手を出したな、魔族」



 そいつは悪手じゃろ……。



 ソンチョーのスキルが発動する。

 スキル『見切り』。

 敵の攻撃を寸前で躱すスキルだ。

 だが、村長はそれだけではない。


 鞘から片刃の剣を抜くと、同時にスキルが発動した。



 『居合い斬り』!!



 次に俺が見たのは、場所を入れ替えたデュラとソンチョーの姿だった。

 直後、デュラの身体が腰から真っ二つに割れる。

 上半身部分が転がると、盛大な音を立て地面に落ちた。


 一方、ソンチョーは無傷だ。

 右に剣を払ったまま固まっている。


 勝負あった。


「すげぇ……」


 俺は思わず呟く。


「な、何故だぁぁぁああああ!?」


 叫んだのは、デュラだった。

 コロコロと地面を転がった頭が、カタカタと怒りに震えている。


「何故? オレがジジィなんかに!!」


「ほっほっほっ。それはな」


 ソンチョーは振り返って、自分のステータスを展開する。




 名前   : ソンチョー

 レベル  : 12/99

    力 : 105

   魔力 : 51

   体力 : 79

  素早さ : 70

  耐久力 : 63


 ジョブ  : 剣豪


 スキル  : 見切りLV4 居合い斬りLV2



「け、剣豪ってなんだ、そりゃ!」


 デュラは声を上げる。


 そうだ。

 村で唯一のジョブ持ち。

 それはソンチョーだった。


 ジョブは『剣豪』。

 強力な攻撃系スキルと、回避系に優れたスキルを持つジョブである。

 成長補正も高く、特に目を引くのは力の値だろう。


 これに『居合い斬り』が組み合わされば、ランクBの首無し騎士でも相手にならない。


「くそ! なんでオレ様が爺ぃなんかに!!」

「デュラ、お前の敗因は強くなることをやめたことだ」


 俺はデュラの首を見下ろしいった。


「強くなるのをやめただろ」

「…………ちっ!」

「レベルが中途半端に止まってる。レベルがカンストしていれば、ソンチョーはもっとお前に苦戦していただろ。だが、お前の実力はランクC。いや、それにも満たないかもしれない」

「う、うっせぇええええ! 説教すんな! こんな土地まで飛ばされたくせに!!」

「それはお前も同じだろ? エヴノスに見限られて、暗黒大陸で用心棒まがいのことをしてるんじゃないのか?」

「ぐっ!」


 デュラは口を噤む。

 どうやら図星らしい。

 わかりやすいヤツだ。


「うっせぇえよ、育成馬鹿! てめぇなんて、それ以外何もできねぇのによ」


 ガシッ!!


 激昂するデュラの頭を掴んだのは、ルナだった。

 怒りを滲ませ、デュラの頭にはまった兜を握りしめる。

 ギリギリという軋む音が、聞こえてきた。


「ダイチ様は何もできないなんてことはない。何もできない人の背中を押してくれる立派な大魔王様です。それを馬鹿にするなんて許せない!」

「こ、小娘! 何をする!!」


 ルナは魔力を高めると、スキルを唱えた。



 『浄化』!!



「これが大魔王が与えてくれたスキルです!!」


 叫びながら、ルナは魔力をデュラの頭に込めた。


「ギャアアアアアアア!!」


 デュラの断末魔の悲鳴が響く。

 同時に立ったままの下半身がむちゃくちゃに暴れた。

 やがてデュラは光の中に消えていくと、ついにこの世から消滅した。


「ルナ、ありがと」


 俺は怒りで興奮するルナの頭を撫でる。

 そのルナは頭を振った。


「いえ。今のは本心ですから」

「わかってるよ。だから、ありがとうなんだよ」

「……はい!」


 最後は笑顔に戻る。

 戦ってる姿も凜々しいけど、やっぱりルナには笑顔が似合うな。


 暗黒大陸に花開いた笑顔を見ながら、俺も自然と笑うのだった。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


ソンチョー、1万回の感謝とかしそう(すっとぼけ)


面白い、エロジ……ソンチョーが活躍した(驚愕)と思った方は、

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