第14話 せんにゅう みっしょん
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昨日、過去最高PVを達成しました。読者の皆様に感謝申し上げますm(_ _)m
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獣も寝静まった丑三つ時。
俺――いや、俺たちはブラムゴンの屋敷近くに潜んでいた。
ルナ、チッタに加えて、村にいた数名の有志たちが息を殺している。
その視線の向こうにあるのは、屋敷の見張りについたアーミードッグたちだった。
アーミードッグは大型犬よりもさらに大きく、凶暴な牙と爪を持つ魔獣だ。
それがブラムゴンの屋敷の周りを警邏している。
鋭い視線を見て、参加した村人たちは震え上がった。
「ひぃ!」
「大丈夫かな……」
「わし、ちょっとションベンしに行ってくる」
「俺はお腹が……。いたたた」
ここまで来たというのに、みんな完全に居竦んでいた。
腹を押さえて、明らかに仮病とわかる演技をする村人まで現れる。
「大丈夫ですか? わたしが回復させましょうか?」
ルナは手を当て、『大回復』を使おうとする。
だが、村人の1人は慌てて手を振った。
ルナは純粋だからな。
嘘が通用しないんだ。
「お前たち、怖い気持ちはわかるが、村の存亡がかかっておる。ドリアード様の話を思い出せ。ダイチ様に協力するのだ」
訴えたのは、村の村長である。
齢60という年齢にも関わらず、今回の作戦に参加していた。
村長の言葉を聞いて、皆の目の色が変わる。
持っていた木の鍬や鋤を持って、屋敷を警邏するアーミードッグを睨み付けた。
意外と言ったら、村長に失礼だけど、それなりに人望はあるようだ。
「ダイチ様は村の畑の土を生き返らせてくれた」
「その恩を返すための戦いでもあるんだな」
「おらたちは、ダイチ様に強くしてもらった」
「頑張らねぇとな!」
気合いは入ったみたいだ。
とはいえ、ゲームみたいにすぐにパワーアップするわけじゃない。
アーミードッグぐらいなら、
けれど、ブラムゴンに変わって、屋敷の主となった魔族には難しい。
◆◇◆◇◆
3日前――。
俺は暗黒大陸にあるブラムゴンの屋敷を襲撃することを提案した。
あの魔蛙族はずっとこの大陸の王様だった。
屋敷があることは、ルナから聞いていた。
おそらく村人たちから奪った食糧も、そこに備蓄されていると思われる。
ほしいのは、その食糧だ。
だが、村人たちは却下した。
「ダメだ」
「ブラムゴンはいないけど……」
「あそこには用心棒がいるんだ」
と、村人はこぞって教えてくれた。
「用心棒?」
俺が首を傾げると、村長が1歩進み出て、神妙な顔を浮かべる。
「首無し騎士ですじゃ」
「え? 首無し騎士!!」
それは魔獣ではない。
歴とした魔族だ。
しかもかなり強い。
経験値ランク――つまり、強さにおいてもCランクの強さを持ってる。
レベルによるけど、ブラムゴンよりも強い可能性だってある。
いきなり魔族戦か。
もうちょっと後になると思ってたけど……。
だが、逆に考えれば好機だ。
ここで倒しておけば、後に控えているブラムゴン戦で首無し騎士が出てこないということになる。
各個撃破できるチャンスと思えば、リターンは大きい。
「大丈夫です。勝てます」
「本当ですか、ダイチ様」
「はい。そのためにまずは皆さんのポテンシャルを見せて下さい」
「ポテンシャル?」
すかさず俺は【
◆◇◆◇◆
「作戦通りやれば、必ず成功します」
というと、参加した有志たち5人は「うん」と頷いた。
この人たちはみんな俺が選りすぐった精鋭たちだ。
それぞれ何らかの得意なことがあり、今回の戦いに参加してもらった。
作戦はこうだ。
俺とルナ、チッタがアーミードッグを引きつける。
警備が手薄になったところを狙って、屋敷に侵入。
屋敷に隠された武器を調達することが、今回の目標だ。
武器さえ調達できればいい。
可能であれば余計な戦闘は避けたい。
首無し騎士が出てくる前に、武器を調達できればいいけど。
「出ますよ!!」
「みなさん、お気を付けて!」
『ガウッ!』
俺とルナ、チッタが茂みから飛び出す。
アーミードッグの注意を引きつける。
早速ワラワラと集まってきた。
それを見計らって、村人たちは屋敷の裏手に回る。
まずは第1段階成功。
村のみんな、頑張ってよ。
アーミードッグの唸りを聞きながら、俺は村人たちの成功を祈るのだった。
◆◇◆◇◆ 村人side ◆◇◆◇◆
ダイチたちがアーミードッグを引きつけている間、村人たちは屋敷の裏に回った。
陽動作戦が成功し、アーミードッグが次々と屋敷正面へと走って行く。
近くに村人が潜んでいると、露も思っていない様子だった。
「ステノちゃんの『気配遮断』は便利だな。俺たちの気配まで隠してくれる」
「おかげでアーミードッグのヤツら、全然気付いてないぞ」
「これなら、お風呂も覗き放題じゃな。ひょっひょっひょ」
村人たちは笑う。
ダイチによってステノと名付けられた少女は、村の中でも比較的若い。
大人しく、村では目立たず、1人いることが多い娘だった。
他の村人がステノの張った『気配遮断』を称賛している横で、どういう反応を見せていいかわからず、おどおどしていた。
「こら、村長! そんなこと言うもんじゃないよ」
「イタタタタタ!! これ、カーチャ! 年寄りをいたわらんかい!」
村長の頬をつねったのは、村では珍しいぽっちゃりとした体型のおばさまだった。
「ステノ、よく作戦に参加してくれたね。偉いよ」
カーチャに褒められたステノは、頬を染める。
辿々しい口調でこう答えた。
「みんなの役に立ちたかったし。それに――――」
「それに?」
「だ、ダイチ様の役にも立ちたい」
ステノはさらにポッと頬を赤らめる。
それを見て、村人たちはニマニマと笑った。
「ルナにライバルができたな」
「む? ルナもダイチ様、狙いなのか?」
「見ればわかるじゃろ。いーのー。わしも若い頃は」
「ぐだぐだ言ってないで! とっとと屋敷の鍵を開けるんだよ、アバカム」
アバカムと名付けられた青年は、屋敷裏にあった人族専用の扉に貼り付く。
鍵穴に向かって、手を掲げ『解錠』のスキルを使った。
「わかってるよ! 集中してるんだから、静かにしてくれ!!」
アバカムは苛立たしげに声を張り上げる。
だが、これが悪手だった。
その声はステノの『気配遮断』の限界を超えて、周囲に響き渡る。
途端、うなり声が聞こえた。
1匹のアーミードッグがこっちに近づいてくる。
「やばい! 1匹こっちに来たぞ!!」
「仲間を呼ばれる!」
「ここはわしが――――」
村長が出て行こうとした時だった。
アーミードッグの眉間に、木で作った矢が突き刺さる。
見事急所を射貫かれたアーミードッグは、音もなく崩れ落ちた。
「ふぅ……」
息を吐いたのは、カーチャだ。
その手にはお手製の弓矢が持っている。
彼女が持つ『射撃』のスキルを上乗せした一射が、アーミードッグを即死させたのだ。
その腕前に、男衆はあんぐりと口を開けて固まる。
小さく拍手を送ったのは、ステノだ。
「カーチャさん、すごい」
「ありがとよ。ステノ。さすがに緊張するね、実戦は。……アバカム、まだかい」
「あ、ああ……。今、開いたよ」
屋敷の扉を開く。
「兄貴の番だぜ」
「ああ。任せておけ」
前に進み出たのは、ダイチにトレジャーと名付けられた村の男だ。
アバカムの兄である。
トレジャーは早速『金属探知』のスキルを使う。
財宝などを探り当てるスキルだが、武器なども探知可能だ。
「見つけた。こっちだ」
村人チームは、屋敷に侵入するのだった。
◆◇◆◇◆ 各村人 ステータス ◆◇◆◇◆
名前 : ステノ
レベル : 13/80
力 : 58
魔力 : 54
体力 : 70
素早さ : 78
耐久力 : 48
ジョブ : なし
スキル : 気配遮断LV3 トラップLV1
名前 : カーチャ
レベル : 11/70
力 : 62
魔力 : 28
体力 : 69
素早さ : 50
耐久力 : 58
ジョブ : なし
スキル : 必中LV3 動物会話LV2
名前 : アバカム
レベル : 9/70
力 : 41
魔力 : 44
体力 : 58
素早さ : 49
耐久力 : 40
ジョブ : なし
スキル : 解錠LV4
名前 : トレジャー
レベル : 10/70
力 : 42
魔力 : 49
体力 : 63
素早さ : 57
耐久力 : 45
ジョブ : なし
スキル : 金属探知LV3 忍び足LV2
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【緩募】ゲームキャラの育成方法で、ユニークなものがあれば教えて下さい!
面白い、新キャラステノ頑張れ、と思った方は、
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本日は拙作『ゼロスキルの料理番』のコミカライズ更新日となります。
不思議な魔獣料理を作る青年ディッシュと、辺境一の聖騎士アセルス、聖獣ウォンが織りなす異色の異世界グルメ漫画をどうぞご堪能ください!
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