使命

第1話

私は、チョウ、

オオムラサキ。

この国では、国蝶と言われているらしい。

そんなのは、私は知らない。

でも、まだサナギの中。

そろそろ、羽化をするために、この中から出る。

子供の頃に、空は見た。

憧れた。

「私もいつか、飛びたい」と。

でも、成虫になれるのは、ごくわずか。

殆どは、そうなる前に、他の生物の餌食となる。

しかし、私は成虫になることが出来そうだ。

神様に、感謝をする。

このまま、何事もなく、大人になれますように・・・

そして・・・

私は無事に大人になれた。

オオムラサキという、チョウになった。

私の食事は、木の樹液。

花の蜜ではない。

私は食事のために、その場所へと向かう。

これは、本能が教えてくれる。

探す必要はない。

たどりつくと、先客がいた。

みんな、仲良く飲んでいる。

かなり、広範囲に樹液がある。

争う必要はなさそうだ。

「新入りさんかい？」

一番大きいのに、声をかけられる。

「わしは、カブトムシ。オオムラサキさんだね」

「ええ。」

「あっちは、クワガタ。向こうは、スズメバチじゃ」

ご丁寧にあいさつをする。

「このレストランは、広いので、喧嘩の必要はないのじゃ」

そう・・・

もし小さいと、奪い合いになる。

私に勝ち目はない。

「まあ、よろしくな」

私の使命は、まだこれからだ。