第24話 お父様からの呼び出し
私とお母様が待っていると、レティが帰ってきた。
「あ、レティ、お帰り。何かあったの?」
「いやあ、助かりましたよ。やっと、あそこから抜け出せました」
私の質問に、レティはそんなことを言ってきた。
やはり、何かがあったらしい。
「何かね……一体、何があったのかしら?」
「お父様とお兄様に捕まりましてね……」
「ああ、なるほどね……」
お母様の質問に、レティはそう答えた。
私達の予想通り、お父様とお兄様に捕まっていたようだ。
恐らく、レティが何かをしたのだとは思うが、それでも災難だっただろう。
「ちょっと、盗み聞きしようとしただけであれとは、本当に厳しいですよ」
「盗み聞きしようとしたのね……」
「レティ、それは駄目だよ……」
「うっ……」
レティは、盗み聞きをしようとしたらしい。
そんなことをしようとしたら、お兄様がどういう反応になるかはわかる。
お兄様は、人の気配を感じるのも上手いので、すぐに見つかるだろう。そして、見つかれば怒られる。それが、簡単に浮かんでくるのだ。
「あ、そういえば、お姉様、お父様が呼んでいましたよ?」
「え?」
「お茶が終わってからでいいから、お父様がいる部屋に来て欲しいそうです」
「うん、わかった。伝えてくれて、ありがとう」
どうやら、私のことを、お父様が読んでいるらしい。
私に何か用事でもあるのだろうか。いや、単純に話したいだけかもしれない。お母様とは話したが、お父様とは話していないので、その可能性の方が高い気がする。
「それなら、今から行ってきたらいいわ」
「お母様、いいのですか?」
「ええ、私は結構話したから、あの人に譲ってあげないとね」
そこで、お母様がそう提案してくれた。
それなら、お父様を待たせることもないので、とてもいい提案だ。
ここは、その言葉に甘えさせてもらおう。
「それなら、お言葉に甘えさせてもらいます」
「ええ」
こうして、私はお父様の元に向かうのだった。
◇◇◇
私は、お父様の元に来ていた。
「お父様、それで今日はどのようなご用件でしょうか?」
「ああ、まず、入学式に行けなかったことは、謝罪しなければならない。すまなかった」
「い、いえ、気にしていませんから……」
お父様は、最初に謝ってきた。
やはり、お母様と同じように入学式に来られなかったことを気にしていたようだ。
二人とも、こういう所はとても律儀なのである。
「ふむ、ありがとう。ルリアもレティも優しいな……」
「そ、そんな……」
お父様は、私を褒めてくれた。
レティのことも言っていることから、説教の時に謝罪を済ませたのだろう。説教の時、そう言われたレティの気持ちを考えると、とても辛くなる。
「さて、それで今日の用件はそれだけではないんだ」
「はい?」
そこで、お父様はそんなことを言ってきた。
当然、入学式に行けなかった謝罪だけで終わるとは思っていなかったが、どうやら何か用件があったようだ。
「実は、ルリアが学生になったら、伝えようと思っていたことがあるのだ」
「伝えようと思っていたこと?」
「ああ、少々長い話になるだろう」
何やら、私が学生になってから、伝えようと思っていたことがあるらしい。
それは、なんとなく予想ができた。一つの区切りのような時期に話すこと。それは、恐らく、私の本当の両親絡みのことだ。
私は、少しだけ覚悟する。何を言われるかわからないが、こういうことは心しておかなければならないことだ。
「君の両親と、私の出会いについて、話そうと思ってな……」
「私の……お父さんとお母さんと、お父様の出会い……ですか?」
「ああ……」
私が予想していた通り、お父様は本当の両親について話そうとしていた。
それは、大まかなことだけは知っていることだ。
厳しかったお父様は、私の両親に助けられて、丸くなった。そういう流れのはずである。
確かに、その話しは今まで詳しく聞いたことはない。しかし、何故このタイミングで、お父様は話す気になったのだろう。
「どうして、今、その話を……?」
「君が、恐らく全てを理解できるようになったと思ったからだ。君が学生になる時か、学生を卒業する時か、そのどちらかに話すべきだと思っていた。今の君なら、恐らく大丈夫だと理解した」
「今の私なら、物事をきちんと理解できる……ということでしょうか?」
「ああ、そうだ。それならば、話しておくべきだろう。君の両親が、どれだけ素晴らしかったか、そして、私がどれだけ愚か者だったかを……」
「お父様……」
お父様の顔には、決意のようなものが見えた。
その表情で、私は理解する。これは、お父様にとっても辛い話なのだろう。
昔のお父様を、今のお父様は後悔している。そのため、お父様にとって、昔を振り返るのは辛いことだ。
それに、自身を救ってくれたという、私の両親のことを思ってくれている。二人を思い出す時、お父様はとても寂しそうにしているのだ。それは、友人への思いなのだろう。
「わかりました。お願いします、お父様」
「ああ……」
こうして、私はお父様の話を聞き始めるのだった。
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