派遣アサシン

鷹山トシキ

第1話 派遣社員の中に犯人がいる。

 2008年

 12月1日 - 1943年創刊の読売ウイークリー、この日発行の12月14日号を最後に休刊。


 12月5日 - 本田技研工業、第3期F1活動の撤退を発表。

 

 12月9日 - 宮内庁、12月上旬に体調を崩し、精密検査を行った明仁天皇の容態について、「心臓の不整脈は収まった状態である。しかし胃と十二指腸に炎症所見が確認された。陛下がご体調を崩された原因は皇室内外の諸問題に対するご心痛、ご心労であると見られる」と発表。侍医団は天皇の公務見直しなどを宮内庁に要望。


 12月12日

 日本漢字能力検定協会が公募した“平成20年 今年の漢字”に『変』が選出される。

 3月19日、茨城県土浦市で男性を刺殺し、茨城県警察により指名手配されていた男が、JR常磐線荒川沖駅前で8人に切りつける通り魔事件を起こし、1人を刺殺、2人に重傷を負わせ直後に逮捕(土浦連続殺傷事件)。

 6月3日

 埼玉県川越市今泉の駐車場で、男2人が拳銃を持ったまま車内に立てこもる事件が発生。車から拳銃を持って降りてきた1人は公務執行妨害容疑で現行犯逮捕され、拳銃を所持したまま車内に立てこもっていたもう1人は、約9時間後に拳銃で頭を撃って自殺を図ったところを銃刀法違反容疑の現行犯で逮捕された。病院に搬送されたが、のちに死亡が確認された。

 日雇い派遣大手「グッドウィル」の違法労働者派遣事件で、労働者を二重派遣したとして港湾運送会社「東和リース」の元常務が職業安定法違反容疑で、グッドウィル元北関東エリアマネジャー兼企画管理部事業戦略課長ら3人が同ほう助容疑などで逮捕された。

 6月8日

 東京都千代田区外神田の路上でレンタカーと思われるトラックが通行人を跳ね飛ばし、更にトラックの運転席から飛び出した男が刃物のようなもので次々と通行人を襲撃した。この事件で7人が死亡し警部補ら10人が負傷。尚、男は警察に身柄を確保され、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。

 今年は変な事が相次いだ。


 新テロ対策特別措置法改正案がこの日の参議院本会議で民主党などの野党の反対多数で否決された後、衆議院へ返付され、衆議院本会議で自由民主党と公明党の賛成票3分の2以上を以て再可決され成立。金融機能強化法改正案は、参議院本会議で民主党の修正案が可決されたが、衆議院返付後、衆議院本会議にて民主党修正案を自由民主党と公明党の反対で否決した後、当初の衆議院通過時原案を自由民主党と公明党の賛成票3分の2以上を以て再可決する異例の形で成立。


 麻生太郎首相、総額23兆円規模となる緊急経済対策、『生活防衛のための緊急対策』の概要を発表し、「主要先進国で一番早い不況脱出を目指す」ことを表明。


 12月19日 - 日本銀行、政策金利の誘導目標を年0.3%から0.1%程度に引き下げることを決定。

 

 同じ日の夜、俺は路頭に迷っていた。ウサギ印刷って会社で働いていた。2006年4月に入社して最初の頃は順調だったが、社長の宇崎栄太郎が2008年6月に病死してからはボーナスも出なくなった。

 高校時代、テニス部で一緒だった緒方和美と婚約していたが、婚約を破棄された。同じ年の昨日のことだ。別れを切り出されたのは生まれ故郷、江沼地市にある公園のベンチだ。温かいコーヒーの缶が冷たく感じた。

「一郎ってさケチだよね?普通さ?男なら彼女の誕生日にケーキくらいくれるでしょ?」

 11月23日は和美の28歳の誕生日だった。

「ボーナスなくなったんだ。家賃とか大変」

「親と暮らしてるんじゃないんだ?」

「親父と仲悪いから」

「ふ〜ん、それじゃ結婚は無理だね?」

 

 大晦日、実家で紅白を見てると吉良州和って大学時代の友人からTELがあった。ケータイも手放そうと一瞬思ったが、休みや遅刻の連絡が出来なくなる。

《正月になったら回線パンクするだろうからさ……》

 吉良の甲高い声に鼓膜が悲鳴を上げた。

「だよね?」

《赤城、仕事はどうだよ?》

 ボーナスがなくなり、残業は増え帰るのは深夜になるのもザラだ。さっき、風呂に入る前に体重計に乗ったら55kgあった体重が51kgになってた。タオルで頭を乾かしながら、「痩せちった」と年越し蕎麦を作ってるオフクロに相談したら「コンビニ弁当ばっかり食べてんでしょう?」と心配された。

「辞めようと思って」

《今、派遣の仕事してるんだ。俺も昔、スーパーで働いてたけど店長とケンカして辞めてさ?派遣はナカナカいいぞ?福利厚生もしっかりしてて、保養所もあるんだ。こないだワイハーに行ったよ》

「マジで?魅力的じゃん?」

《よかったら紹介してやろうか?》 

「試験とかあんだろ?」

《面談だけ?》

「面接じゃなくて?」

《派遣の場合は面談って言うの、なんか学校みたいだろ?》

「三者面談?」

 

 1月20日にエベレストって派遣会社に入った。和美に電話してワイハーに行こうって言うつもりだったが、未練がましいのでやめた。派遣先はコブラというボールペン会社だ。親を説得して自宅に戻って来た。工場は家からマイカーで10分のところだ。

 オフクロの料理はしっとりとしてて美味かった。マジックのラベルを貼るのが仕事だ。手で直接貼るのではなく、機械でリズムに乗りながら貼る。


 1月25日、埼玉県の暗黒街の一角であるパーティーが開かれた。一座から崇められる黒衣の夫人がいた。求めに応じて全裸でフラダンスをする美貌の彼女の左腕には、黒い竜の刺青があった。その晩、恋人と恋敵を殺して庇護を求めてきた青年、県堂小太郎を死亡偽装させ、勅使河原俊之の名を与えて忠実な部下に加えた彼女、梨川虹子はホテルHに滞在中の京都の富豪、滝川長兵の令嬢・月子を誘拐するために、緒方和美の名で滝川老人に近づいた。だが滝川は相次ぐ警告文をもとに、孫の赤城一郎に依頼して、その身辺警護に当たらせていた。


 月子の誘拐の可否について赤城に賭けを挑んだ緒方和美こと梨川虹子は、変装して勅使河原となった県堂小太郎とともにまんまと月子を浚ってみせたかに見えたが、赤城の機智の前に一敗地にまみれ、かろうじて逃亡。   

 赤城と滝川は、浦和南部の滝川の自宅で月子を匿うが謎の集団が攻めてきた。

 ニット帽+マスク男がどんな鍵でも開けられる鍵でこじ開け、ハンチング帽+マスク男が銃で月子と滝川を撃ち殺した。


 1月28日

 浦和警察署・強行犯係の柴田涼香は凄惨な射殺体に吐き気を覚えた。壁には口紅で『エベレスト』とダイイングメッセージが書かれていた。書いたのは長兵だ。

 犯人はエベレストに向かったと涼香は思った。海外での捜査にワクワクした。が、長兵の経営する自動車会社がエベレストって派遣会社と提携していた為、犯人はエベレストに勤務する誰か?って新たな答えを導き出した。

 27日深夜11時、刑事部屋の電話が鳴った。文明が発達したってのに黒い電話だ。外からでも聞こえるってのが理由だ。

「はい、浦和署一係」

《うっ、撃たれた……グハァッ…》

 電話の相手は男性だった。長兵だろう。現場に到着する頃には0時に切り替わっていた。月子は頭を撃たれ即死、彼女にダイイングメッセージは残せない。長兵は大腿部を撃たれていた。太い血管を撃たれた為に出血多量で亡くなった。血が溢れ出し意識が遠のくなか必死で書いたのだろう。佐川って男性と、瀬野って女性が腹をナイフで刺されて亡くなった事件がつい先日発生した。犯人はまだつかまっていない?同一人物の犯行だろうか?


 赤城の夢①

 アカギ・イチロウは魔族の人間だ。男を殺すと未来に、女を殺すと過去に行ける。例えば2008年4月2日18時30分に男を2人殺せば、2年後の2010年4月2日18時30分に行けるのだ。

 2009年1月27日20時45分、ゾンビがN街に襲来した。街の西にある錆びた橋をオガタ・カズミとキラ・クニカズは歩いていた。高校教師の2人は残業を終えてラブホに向かっていた。ゾンビは橋の下に群がっている。30匹はいるはずだ。

「カズミ!」

「クニちゃん!死にたくない!」

 ゾンビの集団の中にアカギはいた。

 口から消化液を吐きながらカズミを食した。👩1人


 クシャクシャクシャ、気味の悪い咀嚼音にキラは鳥肌が立った。

 アカギはキラも食べたかったが別のゾンビに食われてしまった。

 森の向こうに🏩が見えた。アソコに行けば人間がたくさんいる。

 🚨ファンファン!🚓 

 パトカーが遠くからやって来た。ドアが開き、N署のケンドウ・コタロウとサガワ・シュウタがリボルバー拳銃・コルトパイソンを手にして現れた。

「クタバレ!ゾンビ!」

 ケンドウは5匹ゾンビを倒した。残りは1発だ。

「ケン!早く弾を込めろ!」

 空になってからリロードしたのでは遅すぎる。が、サガワ課長の思いは伝わらず、6発目を外した挙げ句、アカギに食われてしまった。

 👨1人

「ケンッ!」

 サガワはアカギを撃とうとしたが別のゾンビたちに囲まれ、あっという間に餌と化した。

 

 テシガワラ・トシユキとナシカワ・ニジコはラブホの一室で立ちバックで交わっていた。

「アンッ!アンッ!アンッ!」

 テシガワラはニジコの中に大量に射精した。

 バンッ!ドアが突然開き、ゾンビが大量に入って来た。

「オレノエモノダ!」

 アカギは死んだサガワが持ってたリボルバーを奪っていた。バンッ!バンッ!バンッ!ゾンビを撃ち殺し、床にしゃがみ込んだニジコを射殺した。

 👩2人

 

 テシガワラはアカギの中学時代の同級生で、腹を殴ったり顔に硫酸をかけてきたりヒドイイジメに遭っていた。それに耐えかねたアカギは、自宅マンションのベランダから飛び降り自殺してゾンビになった。

 リボルバー2発でテシガワラを仕留めた。

 🔫0発 👨2人

 

 セノ・ソノコは坂道を上っていた。闇は深く、遠くにラブホの灯りがポツンと見えた。友達は皆、死んだ。坂の下にある学校で屍になっている。ソノコは高3、3月で卒業する。右手にはオートマチック拳銃・ベレッタM92Fがしっかりと握られている。

 残りは1発、最後の弾はアイツに喰らわせる。しかし、アイツがこんなことを仕出かすとは……虫ケラだと侮っていた。依然、辺りは静かだ。風が一瞬止まる。安全装置を外した。背後に気配がした。ここで死ぬわけにはいかない!この先のヘリポートにボスのタキガワ・チョウヘイの部下の航空隊が到着する手筈になっていた。

 50歳のチョウヘイには、ツキコという20歳になる娘がいるが、近親相姦をしたとの噂もある。

「ソコマデダ、セノ」

 十字路に差し掛かったとき左側から声がした。いつもとは立場が逆だ。学校でイジメてるときはソノコが追う側だ。それが追われている。全く情けない、ソノコは溜息を吐いた。3年7組のクラスメイトの中で生き残ったのはソノコとシバタ・スズカの2人だけだ。 

 ソノコはアカギから逃げることが出来るのか!?

 アカギはソノコは食わずに未来へと旅立った。『ゲルゲラゲリゲロ』って呪文を唱えるだけだ。

 

 赤城一郎 

 緒方和美 

 吉良州和

 県堂小太郎 青年

 ☓佐川秀太 恋敵

 柴田涼香 浦和警察署強行犯係・巡査部長

 ☓瀬野園子 恋人

 ☓滝川長兵 富豪

 ☓滝川月子 令嬢

 勅使河原俊之 県堂

 梨川虹子 黒い竜の刺青 佐川・園子殺害


 

 


 

 

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