議題3ー全員愛されキャラだったら話が死んでいる件について

議題3.全員愛されキャラだったら話が死んでいる件について


「とにかく……ヒロインはオレがやる」


はぁはぁと死線を繰り広げていたダンタリオンが、戻って来た。

シスターバードックは驚異の体力で、呆れて帰っていったらしい。


「オレがやるって……どうやって」

「とりあえずこうだ……!」


ダンタリオンは、かわいらしいJKになった!


「どうだ、見た目完璧だろう!」


……ソロモン七十二柱の悪魔である彼は、幻術に長け、自らの姿も変えることができる。


「……見た目」

「中身は」

「というか、その話題、とっくに終わってるから」

「なんだと!?」


三連コンボで終了を告げられて、自棄になったのかダンタリオン。

今度はキンパツ美女に姿を変える。


これは、歌舞伎町の不法賭場に潜入した時のアレだ。


「日替わり美女ハーレムでいけるぞ」

「もういいから。お前、公爵としてのアイデンティティがなくなるぞ」


そうだった。

オレが自分の姿を捨てたら意味がない。


などと呟いて戻る。アホか。


「話はどこまで行ったんだ」

「どこまでだっけ?」

「秋葉の無能力さについて」

「無能じゃなくて能力ってところは素直に思いやりを感じるよ。ありがとな」


泣いていいかな。


「じゃなくて、秋葉の素直に人を頼れるとこがすごいなって話です」

「もうオレの話はいいから。あと、頼るっていうか、巻き込んでる感しか自分でしなくなってきた」


思い起こすと、直接頼るというより泣きつくとか、巻き込んでいるとかいう方が、多い気もする。

……もしろまっさきに巻き込まれていることも多いわけだが。


「じゃ、ちょっと戻って足りない要素の話?」

「ヒロインの話?」

「どこまで戻るんだよ、ゼロメートル地点だよ」


戻りすぎて、同じ道をたどりそうな予感しかしない。


「ゼロメートル……チューリップしか暮らせない……」

「それな、オランダに失礼だから。あと都内にもゼロメートル地点いっぱいあるから」

「チューリップはかわいいからいいんじゃないの、ヒロインで」

「やめて、何の話だかわからなくなってくる」


お決まりの無自覚な言葉遊びに翻弄されそうになる。

しかも今日は、忍と森さんのダブルで言葉遊びが展開される可能性。


「その話はもう終了だといったろう。また自分たちにネタを振られたいのか?」

「「…………」」


司のものすごい制御力で、女子二人は無言超えて無音になった。


「足りてる要素もあるだろう。例えばオレとかな」

「はいはい、確かに悪魔が魔界の大使やってる話なんてそうねーよ」

「なんだそのなげやり!」

「そうだね、足りない所を埋めようとするより、長所を伸ばすのはいいと思う。というか、定石」


長所とか言うな。調子に乗るから。


めっ!と秋葉は忍に釘をさして、ダンタリオンは放っておくことにする。

……釘をさしたところで、すぐに抜ける程度であるが。


「だから、要するにトータルバランスなんだよ。とりあえず、この話にツンデレは出てこないし、ツインテールミニスカ女子も出てこないの!」

「その代わりにツインテ男子ならたまに出るけどな……」

「秋葉、不吉なことを言わないでくれるか」

「呼んだか、アッキー!」


ほら来た、とばかりに司さん。

振り向きもしない。


そこには宮古進が立っていた。

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