議題2-主人公は特別でないとだめなのか

議題。というか疑問。「主人公はなぜ特別なのか」


というか、平穏無事に暮らしたい秋葉には、周りがうるさくない程度が良い。


「足りない要素っていうなら、テンプレは知らないけど、真正の中二病敵キャラとか、過去編で因縁のある陰のあるキャラとか、いないよね」

「中二病なら、一木とかいるだろ」


一木秀平。

ゲーマーでミーハーで、オタクな神魔好きの一般武装警察。

現在の夢は特殊部隊に入って、技名を叫びつつ、必殺技を放つこと。


……ちなみに一生その日は来ないだろうし、特殊部隊の人たちはそんな技など持っていない。


「そうじゃなくてこう……本気で『世界は俺がぶっ壊す……!』とか言ってみたり、腕に何かが宿っていて『手がうずく……!』とか言う系の」

「そんなのいらないし、そんなの現実世界にいないから」

「瞳の中に何か、模様があってとかなんとかそういうのもあるよね。……というか、なんでゲームやラノベの世界は主人公が『特別』じゃなきゃいけないの?」

「………………」


それは、愛と夢を配る分野だからでは。


よくわからない。


というか、


「秋葉には特殊能力もないし、別に特別でもない」

「いいんだ、オレは普通で」

「特技は『諦めが早いこと』」

「あのな。特殊能力なんて基本的には全員持ってないだろ? 何かあっても後付けだよな?」


一応確認する。

その通りだ。特技はともかく、忍も司も別に異能とかこじれた何かは持っていない。


「オレはいいんだよ。オレは普通の日本人なの!」


しかしなぜか沈黙があり、視線が秋葉に集まっていた。


「な、何……?」

「ふつうじゃない人ほど、自分がふつうであることにこだわるよね」

「でも秋葉は本当にふつうだから、最近はそれがすごいと思うんだ」


何か、言われている。


「確かに特別な能力がある話は、ちょっとわくわくするかもしれないけど、現実でどこかにいそうな人が、物語の中で『生きてる』っていうのが、本当は一番夢がある話なのかもしれないよ?」

「まぁ……努力とか、何やかんやで自力で道を切り開いたりする話は、感動するかもだけど」

「オレはこの現代の整いまくった歩道で、自力でアスファルトを耕したりする気はありません! 人の通った後でも通れれば十分です!」

「そういうところがすごいよね」


……。


確かに、秋葉の周りには、自分で道を切り開くタイプの人の方が多い気がする。

しかし、現実は歩道があればそこを通るし、雪が降って誰かが通った跡があれば人はそれをたどるだろう。


「これ、オレ褒められてんの? 遠回しにけなされてんの?」


うっ、と本日二度目に両手で顔を覆って泣きたくなる瞬間。


「人を頼れる力って、凄いと思うよ」

「人という字は、明らかに右側の方が、反対側のノより辛い思いをしているよね」

「普通は人と人とが、支えあってできてるって言うんだよ!」


なぜか、司に、ポン、と無言で肩に手を置かれて、慰められた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る