「初恋の人を今でも」(乃木坂46)

 初恋がない人はいない、というのは暴論だろうか。

 この曲の歌詞は、結構、普遍的なことを描いていると思う。普遍的、というか、誰もが身に覚えのある、この世界で頻繁に誰の身にも起こっていること、というか。

 これはまったく恋愛とは別ですが、大昔、たまたま上野駅のコンコースを横切ろうとしたら、同じサークルの先輩とばったり出くわしたことがある。あれは本当に不思議だった。あの時以外、人の群れの中で知り合いに会ったことはない。

 どこかで再会できないか、と思うことは実は多い。友人、知人、その他。逆に、会いたくない、遭遇したくない、という人も意外に多い。そういう妄想をさせるのが「人混み」だし、もっと言えば、社会なのかもな、と思ったりもする。

 初恋の人に限らず、色々な人がどこかに去ってしまって、記憶の中だけの存在になるのが避けられない、と僕が気づいたのはいつだろう。今ももしかしたら気づいてないのかも。またどこかで会えるだろう、とタカをくくっていて、気づいていないふりをしているだけで、本当のところではまったく信じていない、またいつか、を信じている演技をしているのか?

 不思議と、記憶の中を探って会いたい人を見つけても、会ったとして、何を言えばいいかはわからない。つまり、僕の中にある「会いたい」は、何かを「確認したい」というだけなのかもしれない。過去を確認したい、というような。

 僕はいったい、どんな言葉をかけるだろう。どんな言葉が果たして、正しいのだろう……。

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