第37話 オーク襲来
「何かあったのか?」
「エ、エリアマスターだ……エリアマスターが現れたんだよ!」
「エリアマスター?」
怯える男性に話を聞き、町の入り口まで駆けて行くと、なんとそこには豚型モンスターの大群がいた。
モンスターは町の周囲をぐるりと取り囲んでいるらしく、その様子に町の人たちには絶望の色が灯り始める。
「ど、どうなってんだよ……」
「分からないけど……結界があるから大丈夫だろ」
勇太たちは圧倒的な数に怯えているようだったが、俺は冷静に状況を判断する。
これも【心術】のおかげではあるけれど……不安が無いわけでもない。
やはり思うのは、俺に勝てる相手なのかどうかだ。
そこそこ強いのは自覚していはいるが、初めて戦う相手にはどうしても慎重にならざるを得ない。
敵の姿は二足歩行の豚型でこげ茶色の肌色をしており、手にはそれぞれ剣や槍を持っている。
こいつらがオークか。
大きさは人間よりも大きい……。
色違いのオークもいるようで紫色のオークも数多くいるが……
そんな奴らの背後……入り口から見える周囲のオークよりも大きなオークがいた。
見た目は周囲のオークとよく似ているが、体のサイズが大きく違う。
背は3メートルほどありそうで、その手には大きな包丁を握り締めている。
豚の顔、図体に左目に大きな切り傷があり、視力は失われているのかその目は閉じていた。
そして離れているというのにピりつくような威圧を感じる……
こいつは、とても強そうだ。
「あれがエリアマスター……オークキングか」
「みたいですね」
ゴクリと息を飲む俺たち。
しかし、やはり結界があるので奴らはこちら側に手を出すことはできない。
とりあえず死ぬようなことはないだろう。
「で、この状況どうする?」
「おう! 正面から戦うぞ!」
「いやいや。それはダメでしょ……」
勇太も磯さんたちも強くなったと言っても、この数はさすがに無理があるだろ。
遠くから【潜伏】で徐々に数を減らしていくか?
攻撃が通用するかどうかはともかく、それが一番確実なのは間違いない。
ここは適当な言い訳をして、敵を倒しに……
「あれ? あいつ何持ってるんだ?」
「え?」
この場から離れようと考えたその時、勇太がオークキングの方を指差した。
俺はオークキングの手元に視線を移すと……その手に持っていたのは一枚のカードであった。
「カード……?」
「ぐふふ……さあ。楽しみの時間だ。お前ら人間どもを殺してこい」
オークキングの声に腹の底まで響くような絶叫で応えるオークたち。
結界があるうちはどうしようもないというのに、何を考えているんだ?
するとオークキングは、手に持っているカードを掲げ、大声で叫ぶ。
「リリース! キャンセラー!」
「キャンセラー……?」
パリンと割れるカード。
そして、町を守っている【結界】――
普段は目に見えないその結界が、ガラスのように割れるのが視界に入る。
「け、結界が消えた……?」
町の人々、勇太たちが呆然と動けないでいる中、暴力的な勢いで駆け出すオークたち。
俺は咄嗟の判断で皆から離れ、物陰に隠れる。
「なんだよあのカードは……」
キャンセラーって言ってたな。
他のカードの効力をキャンセルするカード?
と言うか、モンスターがカードを使えるのかよ。
くそっ。考えても仕方ない。
今はこいつらを何とかしないと。
勇太たちをフォローして敵を倒しつつ町の人たちも守らないと……やることは多いぞ。
俺はサッと骸骨の仮面をかぶり、クロスボウを手に取る。
【潜伏】を発動させ、入り口から侵入しようとするオークに向かって矢を放つ。
こちらの攻撃はどうやら十分通用するらしく、矢を喰らったオークは四散し、後続のオークたちの肉体さえも破壊していく。
「く、来るぞ!」
硬直していた勇太たちはハッとし、武器を手に取り戦闘に突入する。
オークの攻撃を磯さんが受け止め、円がオークの足を切り裂く。
「大丈夫。私たちでも勝てそう」
「よし。行くぜ皆!」
周りにいた兵士たちと共に、オークたちと戦闘を繰り広げる勇太たち。
俺はクロスボウを連射しながら、町の真逆にも入り口があることを思い出す。
とりあえずここは勇太たちで抑えれそうだな……向こうはどんな様子だ?
上空に飛翔しながら矢を放ち、町の逆方向に視線を向ける。
あちらはガリアが押さえているようだが……兵士の数が少ない。
向こうの援護に向かおう。
地面に着地し、逆の入り口の方まで一瞬で駆け抜ける。
苦戦している兵士たちの後ろから矢を次々に放っていく。
「な、なんだ!?」
「敵が四散していくぞ!?」
「ど、どうなってるんだ……」
驚愕する兵士たちに狼狽えるオーク。
ただ一人、ガリアだけが冷静にオークを剣で葬っていく。
ズバズバと力強い一撃を放つガリア。
確かに結構強いな、こいつ。
そのガリアの姿に脅威と安堵を覚える町の人たち。
守ってもらいながらも、やはり彼に逆らってはいけない。
さらにはオークに対して恐怖を抱いており、複雑な胸中で戦いを見守っているようだ。
とにかく被害は最小限に抑えないと……
俺は町の外に飛び出し、上空からクロスボウを放つ。
着地すると同時に左拳でオークを爆散させ、拳と弩で攻撃を仕掛けていく。
「な、なんだあいつは?」
接近戦をしたことにより【潜伏】が解け、突如現れた俺の姿に兵士たちが驚きの声をあげる。
「俺のことはどうでもいい。今は町を守ることに集中しろ」
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