第8話 レベルアップ

 皆が寝静まった頃、俺はこっそりと起き上がり《ホルダー》を開く。

 【骸骨の仮面】のカードを二回タップするとそれは画面から飛び出し、俺の手の中に納まる。


「チェンジ」


 カードから骸骨の仮面を変化させ、それをそっとかぶる。

 前の前には鏡があり、俺はそれをまじまじと覗き込んだ。


 上は黒いパーカーで下は学生服のチェック柄のズボン。

 髪は黒く――骸骨の仮面が怪しく光っている。

 あ、なんかカッコいいなぁ。

 皆の前じゃ恥ずかしくてかぶれないけど、俺はとっても好き。

 1分ほど自分に見惚れ、モンスターと戦いに行くことを思い出し、窓から飛び出して外へ行く。


 暗い森の中に入り深呼吸する。

 自然の香りで肺を一杯にし、木々を揺らす風の音を聞く。

 少し肌寒いし、夜なのでちょっと怖さはあるが……大丈夫だ。

 ゴブリンたち程度だったら、今の俺なら一人でも十分に勝てるはず。


 クロスボウを現出させ、左手に現れる矢をセットする。


 まず【鷹の目】を発動だ。

 すると周囲の木々が半透明化し、暗闇の中だというのに先の方が手に取るように見える。


 見える範囲にいるゴブリンの数は……3。


「【潜伏】」


 次にゴブリンに見つからないように【潜伏】スキルを発動し、近づいて行く。

 サッと素早い動きでゴブリンの近くの木の裏に隠れ、クロスボウに視線を落とす。

 いけるぞ……大丈夫だ。

 少し緊張していて動きの悪い足で、バッと飛び出す。


 そしてゴブリンの頭部目掛けて矢を放つ。

 一撃で倒せるか?

 しかしそれは杞憂にしか過ぎなかった。


 矢を喰らったゴブリンの頭部が、ボンッと四散する。


「え?」


 何でこんなに威力があるんだよ……

 クロスボウに視線を向け、武器のランクが上がったことを思い出す。

 確かにランクは上がったけど、こんなに威力が上がるものなのか。


「キキッ!」

「?」


 近くにいたゴブリンに、俺の姿を捉えられてしまった。

 え? 何で?


 俺は咄嗟に木の裏に隠れ【潜伏】を再発動する。

 こちらに近づいてきたゴブリンは、俺の目の前でキョロキョロしていた。


「ふー」


 ため息を吐きながら、矢がリロードされるのを待つ。

 【潜伏】の持続時間を忘れてた。

 20秒しか持たないんだったな。

 ちゃんと気を付けよう。

 負けはしないにしても、できるだけ安全に行きたい。

 何事にも、慎重にだ。


 左手に矢が出現する。

 俺は目の前のゴブリンを射抜き、また矢が出現するのを待つ。

 時間はそこそこかかるが、隠れながら1匹ずつ仕留めていこう。



 ◇◇◇◇◇◇◇


 一人で狩りに出かけ初めてから三日。

 カードの数もそこそこ集まり、レベルもいい感じで上昇していた。

 やはり一人で活動した方が経験値効率は圧倒的にいい。


 俺は城の部屋の中で、ステータス画面を開いた。



 島田 司

 LV20

 ジョブ  合成師

 HP  66(+13)

 MP  50(+5)

 攻撃力 50(+35)

 防御力 33(+4)

 敏捷  33(+6)

 魔力  50(+10)

 運   25(+2)


 ジョブスキル

 合成Ⅰ

 武器スキル

 弩 21

 アクティブスキル

 火術Ⅱ 回復術Ⅰ 心術Ⅱ 2 潜伏Ⅳ 19 鷹の目Ⅲ 19

 パッシブスキル

 HP増加(中) MP増加(小) 攻撃力増加(大) 

 防御力増加(小) 敏捷増加(小)魔力増加(中) 

 運増加微小) 自己再生(中) 毒耐性(弱)

 麻痺耐性(微弱) 石化耐性(弱) 混乱耐性(弱)

 誘惑耐性(弱) 病気耐性(微弱) 魔力消費軽減(小) 

 成長増進(大)


 驚いたことに、合成はSSR相当に当たるであろう、ランクSSまでの合成ができた。

 潜伏、攻撃力増加、成長増進がランクSSだ。


 潜伏はスキルのみで40秒も隠れることができ、攻撃力の増加は1.5倍となった。


 鷹の目はランクSになり、500メートル先まで見渡すことができるようになっている。

 ステータスは、勇太の初期値を考えるとこのレベルにしては大したことないが、それでも着実に強くなっていると言えるだろう。


 森の中では新たなるモンスターを発見した。

 そのモンスターのカードを俺は《ホルダー》で確認する。


 木に木製の手足がついて、赤い瞳と口が備えられているトレント。

 そのトレントの姿が、【トレントカード】に表示されている。


 トレントカード+4:レア度N

 防御力が5%上昇する


 これもまた他のモンスターカードと併用してセットができ、またステータスが上昇した。

 ちなみに【ゴブリンカード】はと言うと……


 ゴブリンカード+19:レア度N

 攻撃力が20%上昇する


「…………」


 どこまで合成できるんだよ、これ。

 俺は呆れつつもワクワクした気分でカードを眺めていた。

 キラービーカードも+10となり、敏捷も上がっている。


 この様子なら、モンスターカードを入手し続ければ、【勇者】なんかよりもステータス的に強くなれるんじゃないか?

 ランクはSSで打ち止めだろうけど、モンスターカードがあれば……


 そう考えながらも俺は、ガチャで連続で出た【成長増進】のカードに視線を移した。

 これ、ランクSSが二枚あるんだよな……出すぎだよ、出すぎ。

 そしてなんとなく【成長増進】のカードをタップしてみると――『合成しますか?』の文字が現れる。


「……えっ?」


 俺はドキドキと緊張しながら『YES』の文字をタップする。


 カードは光を放ち――合成されてしまうった。


 高速成長:レア度N ランクSSS

 通常よりもレベルと熟練度が高速で上昇する


「…………」


 バクバクと心臓の大きな音がする。

 軽い興奮と混乱が俺の中で混じり合い、判断が鈍りに鈍る。


 ランクSSSって……SSRを超えてるってことだよな……

 これってゲームで言うところのLRレジェンドレアってところか……?

 俺は【高速成長】へと変化したカードを見下ろしながら、ずっと唖然としていた。

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