ストゥラトゥム・カルパー・テルミヌス ~無際限の摩訶~

Uzin

第一部 小さな小さな世界

 

 ここはとある世界に存在する惑星。

 この惑星に住まう主要な知的生物種によりアースと呼ばれる惑星だ。

 そんな惑星であるアース、広大な海原が広がる中にポツンと大陸が一つだけ存在する何とも寂しい惑星である。

 地図で確認すれば海と大陸一つと何とも簡単な世界地図となる訳だが、その大陸には様々な環境が揃っていた。

 大陸の南北に渡り鎮座する様にその偉容を轟かせる山脈。

 その山脈に囲われ大陸の中央に存在する広大な樹海。

 迫り上がって出来た台地と半開放型の盆地。

 湿地帯と熱帯に北と南を挟まれる形で存在するサバンナ。

 山頂を見上げると首が痛くなる程の高さの山々に分断された事により、各地域で固有の生態系を発展させている。

 環境やそこに住まう者達の多様性が非常に豊かな大陸。

 それがこのルク・ディア大陸である。


 女神ルク・ディアによって開闢されたこの大陸は様々な種族を育んだ。


 その結果起こったのは何か?

 知的生命種の宿命…いや、業だろう。

 強者の傍若無人な振る舞いであった。


 その振る舞いを行った国の名は親国アルプ。

 この大陸全てのエルフの父と母である原初のエルフ。

 ルルとチェチェを神と崇め奉る宗教国家である。


 彼らはルク・ディア大陸に住まう他の国家の住民を奴隷狩りと呼ばれる行為で拉致。

 魔術的に奴隷化し使役する事によって国家運営を行っていた。

 圧倒的な魔術の素養でもって常に優位な立場を保持し続けた彼らだが、それは何時までも続かなかった。


 後に解放勇者と呼ばれる存在が、ヒューマン種で誕生したからである。


 この解放勇者は良くある商家の生まれであったが、幼い頃よりその才覚を見せていた。

 その力、特に発想力が飛び抜けていた。

 様々な技術革新を齎し、当時それぞれ単独で統治されていたヒューマン種の都市国家を纏め上げ、多種族と友好な関係を結び奴隷狩りへと対抗する組織を作り上げた。

 そして、親国アルプと解放勇者が結びつけた複数の国家との戦争が始まる。

 ルク・ディア戦役と呼ばれる、エルフとの戦争は永きに渡り行われた。

 構築された戦線は奴隷解放戦線と呼ばれ、強固な防空システムを擁していく。

 山脈を飛行魔術で飛び越えてくるエルフを迎撃する為のこの戦線は、見事エルフの封じ込めに成功。

 新たな奴隷を獲得出来なくなるだけで無く、物資調達に難儀する様になったエルフは、奴隷の解放を条件に降伏を申し出た。


 そして平和の時代が訪れる。

 国交樹立にこそ相応の時間が掛かったが、るく・ディア大陸はこれより先長きに渡り平和を享受していくのであった。

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