第52話 エルサとハッサン

 結局オレ達は秘宝を受け取らずに転移の杖で先住民族達の住処へ戻った。


 歩いて来るオレ達に気付いた先住民の少女ガガとハッサンが駆け寄ってきた。


「マサ君たち、遺跡はどうでしたか?」


「秘宝は?」


 オレ達は族長の部屋へ行き事の成り行きを説明した。


 オレ達はさまざまな難所をくぐり抜けて無事に水竜王のもとに着き、秘宝を譲ってもらったが誰一人その力に反応する者がいなかったので受け取らなかったのだ。結局、秘宝はまだ水竜王が持っている


「じゃ何、貴方達は秘宝をあきらめたって事?」


「ワイらには必要無いって事やな」


「んじゃそういう事でオレ達はもう帰ります」


 エルサやハッサンを強引に掴み、オレ達は転移の杖を使って宿へと戻った。


「ふむ、サンターナに戻って来たのか」


「うん、オレ達の部屋に到着だね」


「ココガ英雄タチノ寝床ナノカ? オモシロイ」


 えっ? マジか、先住民の少女ゾガもエルサにくっついて一緒に来ちゃったのかよ??


「ちょっと! アンタ達さっきの話は??」


「姫さんよ、こういう事やがな」


 エルサが少しブチ切れ気味で来たのでヨッシーが虚空庫アイテムボックスからコピーしておいた秘宝を彼女に渡した。


「なんだ、ちゃんともらってきてるじゃない」


「ちゃうねん、コレわいがコピーしたヤツや」


 オレ達はエルサ姫とハッサンにオレ達2人が異世界から来た稀人でそれぞれ能力スキルを持っている事を説明した。


「す…すごいですわね。この能力があればいくらでも商品が増やせるわ、お店の件! 是非ともやらせていただきますわ」


「お店って? マサキさんたちがやるんですか」


「違うよ、ハッサンがやるんだよ!」


 ハッサンが不思議そうにオレ達を見てきたのでここで詳しく説明する事にした。


 実はオレ達がこのサンモルノ王国に店を構えようと考えている事、ヨッシーの能力以外にも卸先はある事、そしてオレ達がハッサンに店長を任せたいと思っている事、さらにそこにエルサも共に働くという事で店の出資もしてもらえるという寸法だ。


「そういう事でガイドは今日でクビって事にしちゃうけど、店長になってくれるよね♪」


「イヤ……ガイドの仕事が無くなったらもう無職になってしまうので断る理由もないですよ」


「ソレ、ゾガモテツダウ! ゾガスゴクカシコイ!」


 なんと先住民の少女ゾガも参加したいと言って来た。ヨッシーの能力スキルを見てしまっているし先住民族の村へ返してからベラベラと喋られてもマズいんで彼女も店員に加えるか…


「イエーイ!」


 オレとニーヤが互いの手のひらを叩きあうハイタッチをするとエルサやゾガがやりたがったので他のみんなともハイタッチし出した。


 よし、コレでハッサンとエルサは新たに作る店で働く事をオッケーしてくれたぞ!


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