第44話 ウーサの誘惑

 結局、ジャングルの中を数時間さまよい続けただけで遺跡らしきモノを発見する事なくサンターナに戻ってきた。


「そういえばワイ、ご飯の前にハッサンの愛しの

 彼女が働いている店に行くつもりやねんけど

 みんなもどないやろか?」


「どんな人なのか気になるニャ」


「うむ、私も賛成だな」


 みんなで晩ご飯の前にウーサという娘が働いているという店に行くことになった。ちなみに店の場所はオレ達が泊まっている宿屋から徒歩15分ほどで着くそうだ。店の前でハッサンと合流しさっそく店内へ入る。


 店内は気軽に楽しく入れそうな雰囲気があり内装も裸電球やわざと汚した感を出した装飾にお洒落を感じさせる。

 厨房側を見てみると鉄板の上には茶色いひき肉が並び、ちりちりという音を立てていた。


「あ…あれは旨そうニャ!」


 なんだろうタコスやトトポスのようなメキシコ料理みたいな物かな?それにこの香辛料の香りがなんとも胃袋を揺する。なんだか食欲が燃えるように湧いてくる。


「ふむ、どうだろうここで夕飯を食べないか?」


「おうええな!匂いからしてここの料理はスパイシーな感じやろうな」


 オレ達がココで晩ご飯にする事をハッサンに伝えると彼がオススメのセットメニューを頼んでくれたので小皿を人数分頼んでそれをみんなで分け合って食べた。やっぱみんな色々つまみたいだろうしね♪


 中でも野菜がたっぷり入ったスパイシーポテトスープと地酒が美味かったな


「みんな、彼女がここで働いているウーサだ」


 美しい黒髪、褐色の肌、そして均整の取れたボディラインなるほどハッサンが惚れるわけね。

 ハッサンはオレ達にウーサを紹介すると彼女はまだ勤務時間なのだそうなので仕事に戻っていった。


「なんや、真面目そうな娘さんやないか」


「ハッサンもいい人と巡り合えたニャ」


「ど…どうもありがとうございます」


 食べ終わって勘定を済ませるとオレは食事を運ぶウーサとすれ違い様、彼女は誰にも聞こえない小さな声でオレに囁いた。


「3時間後にこの店に来て!待っているから」


 宿に着くとオレ達は各々の部屋へ戻った。

 オレと彼女は初対面だし、別に行く理由が無いハズなんだけど何故か頭から彼女のことが離れず、眠る事すら出来なかった。何故かよくわからないんだけど無性に彼女に会いたくなり、オレは1人宿を出た。


 店に着くとウーサが1人店の奥で待っていた。


「アラ、やっぱり時間通りに来てくれたのね」


 ウーサがオレの隣に座ってしばらくすると妙な気分になってきた。

 何だろう——————君がオレをみているその瞳、その唇、そして君のその女の匂いがする!嗚呼たまらん欲しい欲しい君が欲しいーっ!

 もう我慢できない——————



 忍びの里でジギーにもらったお守りがバチン!と強い音を立てて何か不思議な力を解除した。


  ————ってイヤ!イヤ!イヤ!イヤ!

 うわぁ、ヤベえ?ヤベえ?ヤベえ?ヤベえ?

 何なんだコレは? 今オレ何かがおかしかったぞ?


 探索スキルで敵がいないか調べてみた?

 するとなんと画面に表示がでて赤いランプが一つ

 ウーサだ!とりあえず最近ゲットした鑑定スキルで確認して見る。


【鑑定結果:ウーサ・イスラーマ: 年齢 23歳、

 住所 サンターナ、現在の王の反対勢力に所属するスパイ兼殺し屋、所持している能力スキルは誘惑の香り、暗示の2つ】


 オレはほかに色々と鑑定スキルを使って調べて見ると衝撃の事実が判明した。なんとコイツら10日後に王宮を襲撃するつもりらしい……


「アラ、どうしたのかしら?」


「ち…ちょっとトイレへ行ってくる」 


 オレは急いでトイレに入ると魔法袋マジックバッグから転移の杖を出して宿へと帰還した。


 冗談じゃねえぞ!マジか

 あの女テロリストじゃねぇかよ?

 にしても………何食わぬ顔でハッサンに近づき

 スキル誘惑の香と暗示を上手く使って彼を惚れさせ踊らせ好き放題やらせる事で警備隊を撹乱させようとしていたとかそんな感じなんだろうな。

 ふざけんなそんなの捨て駒じゃんか!

 んじゃハッサンが下着泥棒やっていたのはさっきの能力スキル誘惑の香そして暗示が原因かよ?

 なんだよそれ? こんなの混乱とか毒とか呪いとかの類いじゃねーかよ。


 嗚呼っまたとんでもない事に関わりそう、明日の朝みんなになんて説明しようか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る