第5話 ヨルム村



 山道を抜けるとようやく村が見えてきた。

 村の入口まで来ると槍をもった守衛が待ち構えていた。

 彼の視線はまっすぐにオレ達を見ている。



「やぁジャンいつもご苦労さん」



「セヴランお前、どうしたんだよ何かあったのか?」



 ジャンと呼ばれた守衛はセヴランに駆け寄ってきた。



「実は森で薬の原料採取しているとバーゲストに襲われて死にかけたんだけどこのマサキさんに助けてもらったんだ」



「そうだったのか?良かった。夜になっても帰ってこないから村の皆んな心配していたんだ。村長なんかギルドに連絡して捜索依頼って話まで出してたし」


「すまない、みんなに迷惑かけて……」


「まずは村長に顔見せて来い! 」



 ジャンと呼ばれた守衛がオレを見る。



「それとよアンタありがとうな!どうぞ村へ入ってくれ歓迎するよ」



 ジャンと呼ばれた守衛に握手を交わしたあとオレは村へと入っていくセヴランの後ろについて行く。村は平地に広がるように家が並び、中央に広場があるという形になっている。



「そういえばマサキさんは冒険者なのですか?」


「冒険者? どこかへ冒険をする人っていう事?」


「いえ、冒険者ギルドという所で仕事を受けて

 薬草の採取、魔物討伐とか商人の護衛とかダンジョン探索などの依頼を達成して収入を得る仕事なんですよ」


「ふーんお仕事紹介所みたいな感じだなぁ」


「ギルドに登録しておけば色々と便宜をはかってくれたりしますし、そこで発効されるギルドカードを身分証代わりにもなるので登録だけでもしておいた方がいいと思いますよ」



 彼がいうにはこの村から東の街道へ馬車で2時間ほど走るとケルトブルクという結構デカくてにぎやかな町につくらしい

 その町に行けば冒険者ギルドもあるそうだ。

 こっちの世界に転生した両親に会うには今後、他国へ渡る必要がある事を考えるとやはり身分証が必要になってくる。明日の朝にでもここを出て街へ向かう事にしよう。



「ちなみにギルドの登録料が銀貨50枚かかります」



 銀貨50枚?それって高いのか? よくわかんねえな?

 だったら今ここで相場を聞いてしまおう。それで今後の旅の必要経費を計算しよう。



 色々と相場を教えてもらった。宿屋の1泊(素泊まり)が銅貨5枚、定食の平均が大銅貨3枚パンが1つ銅貨1枚、風呂屋は1回で大銀貨50枚といった感じらしい。銅貨1枚 が10円くらいの感覚なのか?

 貨幣としては銅貨→大銅貨 →銀貨→大銀貨→金貨→大金貨――という感じだ。10枚で1つ上の貨幣となる。セヴランは大金貨なんて見たことがないらしい。

 ただしコレはポローニャ小国の通貨制度であって他国はまた違うらしい

 確か白狐に3ヶ月分の生活費貰ったよな?

 オレはコマンド画面を開いて所持金を確認する。

 金貨3000枚という表示が出て来た。

 うおっやったー白狐様々サンキュー〜♪



「着きましたここがボクの家です」



 セヴランの家に着き、台所に案内された。木造の小屋の一室らしく家具や調度品は粗末なものだが、きちんと整理されており掃除も行き届いているようで清潔感がある。



「ボクちょっと村長を連れて来ます」


「分かった」



 …ふつう初対面の者を家に残すか警戒心が無さすぎだろ

 盗難とかの危険もあるだろうが? まあいいや

 とりあえず椅子に座って待つ事にしよう。


 しばらくするとセヴランが村長らしき爺さんと腰に剣を差した若い金髪女性を連れて戻ってきた。なんというかいかにもザ村長って感じの爺さんだな。それじゃその後ろにいる女性は誰なんだろう

 まさか村長の愛人とかか? いやそんなの紹介されても困るんだけど…


「ワシはこの村の村長じゃ マサキ殿、セヴランを魔物から救ってくれてありがとう」


 村長はオレの手を握り頭を下げる。

 ジジイに手握られても嬉しくねぇし、できればその後ろに控えてる金髪おねえちゃんと手握りあってイチャイチャと

 触り合っていてぇ〜っ!


「騎士爵様!」


「うむ、私はこの村の領主をさせてもらっているマルグリット・ラーハイムと申します」


 うお、金髪女騎士キターッ! 彼女が領主? マジかよ? 金髪美女でスタイルもいいし、まるで外国人モデルみたいだ。胸は何カップだろうか? やっぱり下の毛も金髪なのかな? つーかこの人って貴族なんだよな?とりあえずハリウッド映画みたいにひざまづいて敬礼しておこうっと


「マサキと申します騎士爵様!」


「お立ち下さいマサキ殿、私のことはどうかマルグリットとお呼びください」


 マルグリットさんがオレの手を握って来たぞー!

 この感触、さっきの村長と違い柔らかい♡


「ハイわかりましたではマルグリットさんと呼ばせていただきますね」


「明日ケルトブルクへ向かわれるとセヴランから話を聞いたのですがそれでしたら私の馬で一緒に行きませんか?」


 馬に2人乗りで? それってバイク2 ケツデートみたいな感じか? まさかの向こうから誘って来た。


 この絵に描いたような金髪美女とまさかの2人旅? 異世界ヤベええぇ!異世界マジサイコー!






 ◇






 夕方、オレとセヴランは村長ドニの家に招かれ食事をともにした。テーブルに出されたのは溶けたチーズを乗せたライ麦パンとジャガイモ、玉ねぎ、ニンジン、あとはこの近くの森で取れたキノコ類が入ったシンプルな野菜スープであった。しかしこの野菜スープなのだが素材の甘味がしっかり出ていてとても美味しいので何度もおかわりを頼んだでしまった。そうなるとトイレが大変なんだよなー


 この村はまだ水道整備が発達していないようなので穴のようなトイレで用を済ませてんだよ。しかもその人々の排泄物がほぼ堆肥として利用されるんだってよ。それで育った野菜をムシャムシャと食べてるって何だよそれ! ヤバいじゃんウンコを食ってるようなもんじゃねえかよ?

 そういえば日本の野菜ってたしか農薬使用量が世界一らしく海外では「汚染物」扱いされているって話を聞いた事があるぞ。

 ううっ、一体どっちが汚物なんだか……


「お茶をどうぞ」


 村長の妻が湯気を立てた茶色の湯―― 葉茶が入った木製のコップを持って来てくれた。お礼の言葉もそこそこにとにかくそれを受け取りゴクりと飲む。何だろうコレ?うすいお茶といった感じかな…


 

あと村長から謝礼金という事で金貨3枚もらい、

 さらにその後オレは村長の家に泊めていただき、

 ふかふかのベッドを堪能させてもらった。

 嗚呼コレでさっきのマルグリットさんが横にいれば最高なのに……




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