めんへら母さん

枯崎 情

第1話

僕の母さんは世にいうメンヘラだ。


「辰也、学校行くの?」

「当たり前じゃん」

「今日ぐらい休んでもいいんじゃないの?」

「昨日も同じこと言っていたよね、母さん」


というように、毎日のように僕が学校へ行こうとするのを阻んでくる。

僕にとって母さんのこの言動は日常化してきている。今まで僕は母さんの言動を軽く流してきている。



「おい、辰也!今日のテストどうだった?」


読者の方には状況がイマイチ読み込めないだろうが、現在僕は学校にいる。

そして、本日は期末試験日である。

軽く僕について自己紹介をしよう。

僕の名前は伊賀原いがはら辰也たつや。ごく普通の高校に通う16歳、一年生だ。


「テストぉ?んなもん、集中できなかったに決まってるだろ」


僕に話しかけてきたのは同じクラスメイトであり、親友でもある。日比谷ひびやまこと


「お前らしいや」


僕の不満そうな顔を見ながら横でけらけら笑っている。

誠は幼稚園の頃から家が近くでよく遊んでいた。小学校も中学校も同じ学校へ通い、今では恋人かよというくらいずっと一緒にいる。まぁ、男同士だからそれはないんだけど。


「そういう誠はどーなんだよ」

「俺が真面目に解いたとでも思っているのか??」

「ないな」


そう、こいつ、誠は僕の2000倍馬鹿なのである。


「60分寝て過ごしちまったな」


テスト中は大抵誠は寝ている。それは今に始まったことじゃない。

僕も60分集中できなかったな。。次のテストは集中しよう。

さっきは化学だったから次は数学か。


「辰也、今日も昼ご飯ある?」

「ん?あぁ、あるよ」


誠の昼ご飯はいつも僕が持ってきている。いや、母さんが好きで作っているというのが正しいか。


「お前の母さんも親切だよなぁ。美人だし!」


僕の母さんのことを考えたのか鼻の下を伸ばしてニヤニヤする誠。

誠は僕の母さんの本当の姿を知らないからそんなことが言えるんだ。


「あんな美人な母さんだったら俺幸せだったのになぁ」

「気持ち悪い、やめろ」


こんなことを言い出す誠は本当に気持ち悪い。

正直言って、僕もそこらの女性に比べて母さんは美人だと思う。だけど、家族が故に知っている裏の顔というものがある。


「今日、お前ん家泊りに行ってもいい?」

「だめ」


誠が期待を膨らませた瞳で僕を見つめていると次の教科のテスト監督の教師が教室に入ってきた。


「ほら、テスト始めるぞー」


皆が一斉に席についた。

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