貴方へ

宵闇(ヨイヤミ)

第1話

人は皆誰しも、言葉に出して言うことが出来ないものがあると思う。想い人に言えぬこと、友人に伝えたいことなど、それは人それぞれだと思う。

私も例に漏れず、とある人に伝えたいことが確かにある。が、やはり言葉には出せない。

文字に起こせばそれを言うことは叶うが、それでは本人には届かないのだ。

ただそれは本人に伝えていいのか、私自身が分からない。その人とは色々あった。そしてその“色々”が起きたことで余計に言えなくなってしまった。否、自分からそうしてしまった。

その人に伝えたい事を私は代りにここに記そうと思う。これが本心か否か、そしてノンフィクションなのかは想像にお任せしよう____



___________________


貴方へ


先に先日の事を詫びよう。本当にすまなかった。あれは私が悪かったよ。

色々あったが、どうも貴方への想いはそう簡単には消えてくれないようだ。だから私はそれを自分の中から消したかった。それで嫌われたかったのだ。本当は望まぬ事も望んでいるかのように言ってまで、忘れたかった。

このまま想い続けても意味が無いと分かっていた。また貴方に迷惑をかけてしまうのではないかと、私はそれを心のどこかで恐れていたのだ。

自分の為であり、貴方にこれ以上迷惑かけないようにする為の手段がそれしか思いつかなかった。

こんな不器用な奴ですまない。

それと“あんな事をして今更何を言っているのだ”と言われてしまうのは分かっているが、やはり言いたいと思ったことがある。


私はやはり何があっても貴方を好いているようです。本当に色々なことがありましたが、消えてはくれないようだ。


今更こんな事を言っても、意味が無い事くらい私にだって流石に分かっているさ。だが言葉にせず、文字にもせず、そのままにしておくことが出来なかった。


本当なら直接貴方に伝えたかった。

しかし貴方は冗談だと思って聞いてはくれないかもしれない。そう思ったら“言わない”という選択肢しかないんだよ。だけど私はそれが出来る人では無いから、文字にしたんだ。


出来ることならこれからも大切な友人の一人として付き合っていたい。欲を言えば前の関係に戻ってもいいとさえ思えてしまっている。

筵そのそれを望んでいると言っても過言ではない。



私は貴方の事を……

_____お慕い申しております。


___________________




これはただの文章だ。

また先程も記したように、これがノンフィクションなのか、また本心か否かについては、皆様のご想像にお任せします。

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貴方へ 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121

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