154 ~死~

『人はいつか死ぬ』


 その事実に直面した時、あなたはどう思っただろうか、感じただろうか。


 怖かっただろうか、悲しかっただろうか。


 納得しただろうか、諦めただろうか。


 死があるからこそ、時間を有意義に使おうと、前を向いて歩けただろうか。


 死があるからこそ、全てが無意味だと、前を向くことをやめただろうか。



 何をしても、何があっても、必ず訪れる死──


 誰にでも、等しく訪れる死――



 誰しもそれに一度は恐怖し、眠れなくなった経験があるだろう。


 時には絶望から、生きることを諦めたこともあるかもしれない。








 でも、諦めないで。


 どうか、生きることを諦めないで。


 死を恐れる自分を責めないで。


 死を怖がる自分を恥ずかしがらないで。





 死恐怖症タナトフォビアになれば、人生は辛いかもしれない。


 死恐怖症タナトフォビアになれば、眠れない夜に怯えるかもしれない。


 解決方法がないから。


 理解者がいないから。


 自分自身でさえも、理解できないから。




 でも、死恐怖症タナトフォビアになる人には、共通点が一つだけあるはず。



 それは、今が幸せということ。



 今が無くなるのが怖いから、死恐怖症タナトフォビアになる。


 今が終わるのが怖いから、死恐怖症タナトフォビアになる。


 今より先が分からないから、死恐怖症タナトフォビアになる。




 死恐怖症タナトフォビアでもいい。


 死を怖がってもいい。


 死から逃げなくてもいい。


 ただ、死恐怖症タナトフォビアを自覚すると共に、幸せを感じてみて。




 死恐怖症タナトフォビアのあなたは、間違いなく幸せ者。




 こんなにも、今、幸せを感じられることは、死恐怖症タナトフォビアの特権なのだから。

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