第18話 蕎麦とラーメン
「十割蕎麦をお願いします!」
学食のカウンターで食券を渡しながら、わたしは元気よく言った。
もちろん食券には見るだけで心が洗われるような神々しいまでの「蕎麦」という2文字が書いてある。
わたしは今から、蕎麦を食べるのだ……!
「あいよ! 十割蕎麦一丁!」
料理長さんの威勢のいい返事に気分を良くしながら、わたしはスマホのQRコードリーダーで待ち番号をスキャンすると座席についた。
ほぼ同じタイミングで、メンマちゃんも注文を終えて戻ってくる。
しばらく2人で話していると、すぐにスマホが震えて「料理ができました!」という通知が送られてくる。
料理ができたので取りにこいという合図だった。
アルファルド学園はIT化が進んでいるので、これくらいは当たり前なのである。
ちなみに「IT」の「I」は「インターネット」ではなく、「インフォメーション」の頭文字なので気をつけよう(*'ω'*)
わたしは十割蕎麦、そしてメンマちゃんは――、
「わたしはラーメンアルネ。日本のラーメンは本場中国とは違った独自進化を遂げていて、負けず劣らず美味しいアルからね。日本に来て一番びっくりしたことアル」
「やっぱり中国人と言えばラーメンだよね」
日本人と言えば蕎麦であるように、中国人と言えばラーメンだ。
これは偏見や差別ではなく事実なのである。
「ホントここまでくると、外国人がラーメンを日本の伝統食だと思うのもいたしかたないアル。我々は素直に敗北を認めないといけないアル」
わたしたちは2人で楽しく、できたてほやほやの麺をすすっていく。
ふぅ、蕎麦はいつでも美味しいけれど、他人におごってもらう蕎麦ほど美味しいものはないよねー。
「ところでステラちゃん。
ラーメンを食べながら、メンマちゃんが聞いてきた。
おっとそうだった。
蕎麦をおごってもらうギブの代わりに、アスカちゃんさんの情報をテイクするんだった。
「そーだね、ラジオ運動に連れていかれて、うどん洗脳してきたりとかかなぁ(*'ω'*)」
「ふむふむアル。他にはなにかあるアルネ?」
「あとは三食全部うどんを食べてるよ。アスカちゃんさんは、ガチのうどん一神教徒だから」
「ほうほう、想像通りアル。絶大な女神パワーの要因は、うどんにある可能性が高いアルネ。他にはなにかあるアルか?」
「日々うどんについて研究してるかな。理論武装がすごいから、出来心でマウントをとりにいっても、さらりと返されちゃうし(;´・ω・)」
「やっぱり
ガチのプライバシーや正義の味方関連のことは教えられないけど、この辺のことはまぁいいよね。
別に本人も隠してるわけじゃないし――というか、フルオープンで自らうどんの伝道師的なことをやってるし。
わたしは蕎麦をおごってもらったお礼に、アスカちゃんさんの隠れファンであるメンマちゃんのために、問題のない範囲で色々とアスカちゃんさんのことをあれこれ教えてあげた。
「いやー、ありがとうアル。ステラのおかげでいろんな情報を得られたアル。実に有意義なお昼休みだったアル」
「いえいえどうしたしまして。こちらこそ蕎麦をおごってくれてありがとう」
「ハハハ、気にするないアル。またおごるアル。じゃあそろそろ戻るアル。午後の授業が始まるアルネ」
「だねっ!」
同じ釜の麺をすすったわたしとメンマちゃんはさらに仲良くなって、教室に戻ったのだった。
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