FT部はギリギリ?活動中!!

神奈川県人

FT部はギリギリ?活動中!!

1-1

 時間:朝 場所:頭の中 誰:次の行に記載

 主人公、利根大良とねひろよしは夢を見ていた。



「うっうぅ、俺は......何してたっけ? ってどこにいるんだ俺は」


 周りを見渡してみる、この場所、見覚えがあった。この道、毎日嫌でも見る。


「ここは通学路の事故は起きそうにないストレートじゃないか。俺はなぜここに? ベッドで寝ていたはずだけど......」


 状況を把握するべく周りを二周くらい見渡してから向き直し目のピントが合うその瞬間、目の前に一年の後輩だったか、スポーツ系黒髪のショートカットで漫画にいそうな背の小さいヒロインにもなれるだろうバスケ部員みたいな背格好、それを見るためにプレゼントを上げても許せる価値があると言われているハニかんだ顔の黒部愛花くろべあいかが現れていた。


「あっ、死んだ魚のような目を普段からしている変に説明口調の利根センパイじゃないですかぁ。てことは、間違えちゃったか、ここは利根センパイの......ウンウン、納得納豆食うですよ。」


 なにかを納得した風にうなずいている、古いオヤジギャグらしき物を言いながら。それは別として、納得したことも、なぜ急に現れたのかも全く分からないし雰囲気で伝わっても来ることもない。


「黒部、何を言っているんだ? 何に納得しているんだ、オヤジギャグはなんなんだ?」


 黒部の目がキラリと光る、急に鋭い眼光になって何かを企んだ顔をしてきた。


「ふっふーん! 知りたい? 何が起こっていて何がなんだか知りたぁーい??」


 やっぱり漫画の中の住民なのか? こんな口調、普通ならならない。


「混乱しているから分かりやすく教えてほしい、オヤジギャグについてはもういいが」


「良いでしょう、わっかりやーすく教えてあげましょう。驚かないで聞いてくださいね。ここは、利根センパイの夢の中なんです。見たことがある景色だけど、気づきませんでした? 他の人がいないのに」


 確かにそうらしい。


「いやぁーつまんない夢見てますねぇー!」


 探してみてもいつも働いているゴミの収集車は


「こーんな人がいない夢なんてどうやったら見れるんでしょー」


 見えず、音も聞こえて


「今度から間違えても利根センパイの夢には入んないなー」


 こない。


「うるさいよ! いま人がいないって言う事を確認していたんだから!」


 しかし、分かったことがあった。この場所では、自分の夢の中だからか動きたいように動けて話したいように話せる。

 自分で行動できる夢......? どこかで聞いたことがあったと思う。最上もがみが何かそういうことに興味を持ったときに。


「分かった、俺......たしか明晰夢だっけ? それを見ているんだな、それで思った通りになる......?」


 試しに通行人を思い浮かべてみる。毎朝見ているサラリーマンや散歩をしているおじいさん、可愛らしく中身は怖い女子高生もだ。

 しかし、それらしいものは出てこない。猫一匹だって出てこなかった。

 次に黒部が転ぶところを思い浮かべてみた。いつ転ぶか観察しているとちょうど黒部の重心が前にかかって頭が一気に地面に向かって下がっていく......が、ついに黒部は転ばなかった。代わりにアスファルトの上だっていうのに見事な飛び前転を決めてバンザイをしていた。


「明晰夢ってわけではないのか。じゃあ黒部、答え合わせだ。これは、ここはなんだって言うんだ?」


「良いでしょういいでしょう、答え合わせですよ。これは夢です。利根センパイの、センパイが夢を見ていたところに私が入り込んでいるだけなんです。夢にイレギュラーなことが起こったからか通行人とか、そういうセンパイが思い浮かべていたものは消えたんでしょうね」


 何故、俺の夢に黒部が自由にスカートのまま側転をしているのか、疑問は増える一方だ。


「一つ聞いていいか? 人の夢に入れるのは何でなんだ?」


「聞いちゃいますよねぇ! 聞いちゃいますよ~ねぇ!」


 黒部が側転をやめてニヤリした。あまり良いことは起きないんだ、こういう時は。


「聞いて驚けぇ~!! えっへん! 私は幽霊なのだぁ~! 知ってました? 利根先輩の事だから知らないんでしょうね、まぁ他の方々も知らないとは思いますけど......」


「ん? 今、カミングアウトがなかったか? 新聞の一面飾るぐらいの、気のせいか?」


「まぁまぁ、どうせ夢の中なんですから、どーせ利根センパイはすぐ忘れますから、良いんですよ。そもそも人間は夢を忘れるっていうのは正常な証なんですから安心ですよ」


「あぁ、何でもいいか。どうせ夢の中だもんな、しかも夢は夢でもこれは悪夢になったんだろう。こんなにバカにされるなんてな」


 夢ならもうどうでもいい良くなってきた、なに言われようが夢は夢だから。起きたら夢の内容は覚えていない人間だから。


「おぉっと先輩! そろそろ起きる時間ですよ! それじゃ忘れちゃてくださいね、絶対ですよ!」


「そんな急に? そもそも今何時だ......」


 そんな急に言われたってモヤモヤしたままでこっちは納得してないぞ。 そもそも何時かも知らないし、そんな時間がなんてものがあるなんて思いもしなかった。

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