午前2時、1人で、風呂で。
焼きじゃけ
プロローグ
「あっちゃあああっ!」
一人しかいない台所。一人寂しく夕飯の調理をしている途中、事件は起きた。
「ま、まさかオリーブオイルを入れただけで鍋の中身が爆発するとは…」
鍋の中身を見てみると、美しい色のはずのオリーブオイルが、見るのも躊躇うほどのおぞましい色へと変貌していた。さらに床には、食べ物とは到底思えない物体が転がっている。一体どうすればこんな酷い料理になるのだろうか。…作ったの俺だけども。
「うわぁ…服と体がオリーブオイルだらけでベタベタだぁ…」
とりあえず風呂にでも入るか、と俺は着替えを用意して風呂場へと向かう。途中で洗濯機にオリーブオイルだらけの服を放り込み、風呂場に到着した。
「…このベタベタとれるかな…」
あまりのベタつきにきちんと落ちるのか疑問を抱きつつ、俺は蛇口をひねった。シャワーヘッドからお湯が出る。
…だが、そのお湯は。
「…あっつぅうううッ!!」
……尋常ではないほどに、熱かった。
「ひ、酷い目にあったわ…」
水風呂につかりながら俺は呟いた。全身が真っ赤になり、ヒリヒリしている。
お湯の温度調節が上手くいかなかったのだろうか、出たお湯は体感50度以上だった。
とりあえずあがったら水道会社にでも電話しなければ。
「火傷してるかもしれないし、あとで一応病院行くか…」
俺は大きくため息をついて、風呂からあがった。
「ギリギリ火傷してなくて良かったぁ。」
広めの道路の歩道で独り言を言った。当たったのが一瞬だったのが幸いし、火傷せずに済んだらしい。とはいえ皮膚は傷んでいるので、未だにヒリヒリしている。
「って、もう午後9:00まわってるやん…夕飯どうしようかな…」
こんな時に夕飯を作って家で待ってくれている彼女が居たらなぁ、とくだらない妄想をしてしまう。
25歳を越したのに未だに彼女がいた経験がない。10代の頃比較的仲が良く、たまに一緒に遊んでいた女子はいたが、結局恋人にはなれずに彼女は引っ越してしまった。それ以来は仲のいい女子すらもいない。我ながら外見は悪くないと思う。性格も中の上らへんの部類に入るはず。なのになんで………
「彼女出来ないんだろうなぁ……」
落ち込んだ気持ちで足を進め、数十分たったころ、家に到着した。皮膚はまだまだヒリヒリしている。痛みに耐えながら(めちゃくちゃ痛い訳ではない)ポケットに手をつっ込む。
つっ込んだポケットから鍵を出してドアにさす。いつも通り『カチャリ』と気持ちの良い音がして、俺はドアを開けた。
「ただいまーっ……………」
誰もいないのでもちろん返事は聞こえな
「おかえり!」
「………………は、はぁ?」
ドアを開けたその先には。
今はもう懐かしい、あいつが立っていた。
午前2時、1人で、風呂で。 焼きじゃけ @hikomo11
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