第21話

 左端の空間に到着し、調べてみる。

 確かに教室二つ分の広さがあるのは分かった。

 フヨフヨと浮ついている不思議な感触の空間。



 瑞貴と斧研に愛美の三人はその空間に首を傾げる。


「……切れそうだな」


 瑞貴がポツリと言えば、斧研が肯く。


「なんか加工出来そうだよね」


 愛美も空間の壁らしきところを触れながら肯いた。


「広がりそうな気もする」


 真宮はフヨフヨとした空間を見ながらポンと手を打ちながら周防に訊ねる。


「切ることができ、広げられ、加工も出来るのなら問題は解決でしょうか?」


 周防は難しい顔で無精ひげの生えた顎を擦る。


「排水どうしたもんか……なあ丹羽、なんか良い知恵あるか?」


 瑞貴は手に入れていた幾つかの結晶を見せながら、先程から眉根を寄せて口をへの字にしている風早に声をかける。


「風早、これとこの空間についての意見は?」


 風早はその顔つきのまま結晶を見詰め大きくため息を吐く。


「この……石? 紫色の。それと俺仲良い気がする。それ使うと何かできそうな気もするんだけどなー。あ、斧研先輩と花山院先輩、丹羽と竜堂と知花と一緒だと良い……気もするかもー。この空間だと、こっちの透明っぽい感じの石」


 瑞貴は改めて紫色の結晶と透明度の低い水晶の様な結晶等全ての結晶を意思を込めて見てみる。


「文字が浮かぶな。紫のモノは『空属性の魔石 下の上』『空属性の魔石 下の下』だそうだ。水晶のようなモノは同じ名称でおそらくランクが違う物が幾つかある。名称が違う物だけ言う。ランクはそれ以上のモノもあるしそれ以下もあるが適当に選んだ。『魔石 下の中』『魔礫 上の中』『魔粒 上の下』。他に『光』『火』『地』『風』『水』という属性の結晶がある。どうやら『魔石』『魔礫』『魔粒』というのがこの結晶の名称らしい。それから現在分かっているのは五属性。ランクは上の上や下の中というらしい」


 斧研、神崎、芽依咲、風早、竜堂が素早く反応。


「マジか。でも『マレキ』って……ああ、『魔礫』で『魔粒』。僕には『魔石』とかの名称、属性は分かるけどランクは出ない。つまり『説明』のレベルと」


 斧研は独り納得している。


「『魔石』……これ以上もあるとしたら名称は何だろう……ロマンか……ロマンだな……属性もある……良いな……」


 神崎はどこか恍惚とした表情で非常に楽しそうだ。


「こういうのってさー、魔力切れの時に使ったりだよねー。それとも充電器みたいな感じ―? 属性で出来る事違うとかー?」


 芽依咲は首を傾げつつ面白そう。


「あー! そういう使い方もありかー! だよな、『魔石』だもんな。やっぱり属性あるんだからそれに合った使い方あるよな!」


 何度も肯いて嬉しそうなのは風早。


「でもさ、『魔礫』とか『魔粒』ってあまり聞かないよな。小さいのも全部『魔石』って思ってたけど、小さいんだから別の呼び名っていうのは納得なんだけど。大きさ的に『魔石』の方が効果高そうだと思う。色んな意味で。属性もランク上なのが良いんだろうけど」


 竜堂は興味深そうに見ている。


「『空属性』ってのが鍵かね。空間とかに作用するって所か?」


 周防は眉根を寄せつつ『空属性』と出ている紫色をした結晶を色々な角度から眺め、ため息を吐いた。


「すぐどうにか出来そうかい?」


 真宮は斧研、紫子、瑞貴、風早、竜堂、知花に視線を寄こしながら問うと、斧研と風早、竜堂が口を開く。


「レベルが心配かも。出来ればもっと上げてからが安心かな」


 斧研の難しい顔での言葉に、風早は首を振った。


「作業する事でレベル上がる可能性もあるよ。俺は直ぐにとりかかった方が良いと思う」


 竜堂も風早に賛成ですぐさま肯く。


「だよな。良いの手に入れても慣れてないと、って思う。だからレベルが低い内に色々作業しといた方が良いんじゃないか。それで最初は『魔粒』から始めたら良いと思うんだ。それのランクの低い奴から」


 周防も風早と竜堂に賛成するように顎に手をやりながら肯いた。


「レベルを上げんとどうにもならないっぽいしな。”職業”に関する作業ならレベルが上がる可能性も高いと俺も思う。だとすると竜堂の言う様に『魔粒下の下』とかを……真宮、取り敢えずそれからやってみっか?」


 問われた真宮は周囲の全員を見ながら一つ肯くと口を開いた。


「確かにそうだ。必要不可欠な事だと思う。手探りでもやった方が良いと思うのだが、どうだろうか?」


 視線が重なったと思った全員が肯き、各々手に入れていた『魔粒』をまずは取り出して使えそうな『空属性』『光属性』『水属性』『火属性』を集める。


「腹だた……どうやら『空属性』が一番少ないな。次いで『光属性』。『水属性』『火属性』は多め。忌々し……全員に『魔石』『魔礫』『魔粒』を提供してもらうのも良いかもしれん。全員が使うのだし、納得しやすい」


 対人用の仮面もボロボロな瑞貴の言葉に、周防も苦笑しながら肯いた。


「確かにな。試行回数は多い方が良いか。ある程度残しておきたいし全部まとめて管理がベストかね」


 周防の言葉に真宮が納得し口を開こうとした時。

 両開きの扉が誰かに勢いよく開けられたのだろう、大きな音を立てて限界まで広がった――――

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