明日も

勝利だギューちゃん

第1話

子供の頃、遊んでいた広場があった。

とても、広かった。


でも、遊技施設はなかった。


なので、かくれんぼと、高鬼以外は何でも出来た。


その広場も、今はなくなりショッピングモールが建っている。

今は、わかいカップルのデートスポットとなっている。


しかし、その代わりにそこに住んでいた、鳥や虫たちはいなくなった。


今の子供たちは、それを知らない。

当時の子供たちも、多くは引っ越しをして、大人たちも知る人は少ない。


ただ、建物の裏に小さな公園が出来て、それが当時のなごりとして残っている。

でも、所詮は人工物だ。


かくいう僕も、歳を取った。

当時の事は、情けないがあまりいい思い出はない。


というか、思い出したくない。


「パパ」

「どうした?」

幼い娘に、訊かれる。


「パパが、子供の頃は、ここは広場だったんでしょ?」

「そうだよ」

「たいくつじゃなかった?」

「どうして?」

「何もなくて」


娘の言う事は、正しいかもしれない。

でも、何もないからこそ工夫ができた。


「あまり、いい思い出ないんだよ」

「どうして?いじめらてたの?」


痛いところをついてくる。


「パパをいじめるなんて。許せない。私がプリキュアになって、やっつけてあげる」

「それは、頼もしいな」


今は、こんな事を言ってくれるが、思春期になれば反抗期に入るだろう。

それでいいし、そうあるべきだと思う。


でも、せめて会話だけはしてほしいものだ。


娘をおんぶして歩く。

気持ち良さそうに寝息を立てている。


「パパ・・・がんばれ・・・」


この笑顔を守るために、明日も生きよう。

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明日も 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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