第26話 5−4
しばらく続いていたロケットモーター音が突然途切れ、振動も止まった。一瞬、コンテナ内は静寂に包まれる。しかしその静寂もつかの間、突然、火薬が破裂する音が何度か響き、コンテナの外装が外側へ開いてゆく。爆破ボルトが作動したのだ。
外装の隙間から光が差し込み、その光が外装をこじ開けるように広がってゆく。花びらが散っていくように外装は落ちていった。優人はそれを確認すると、手足のプラズマ発生システムを稼働させる。手足からプラズマジェットが発生し、優人の体に速度を生む。
その速度はあっという間に優人を飛行させるに足る速度に達し、優人をさらに上昇させていった。それを確かめた時、音声通信が入った。
「ご主人さま、大丈夫でしたか?」
「大丈夫じゃねーよ! なまら怖かったよ!!」
ユイリーの声かけに優人は言語野が混乱したのか、何故か訛りが口から飛び出た。
「どうやら大丈夫みたいですね。安心しました」
「どこが安心しただよ! 冗談じゃないべさ!!」
まだ混乱しているようである。
優人のそばを、飛行ユニットで上昇しているユイリーは彼の発言を無視して、
「只今随伴機が捜索中……。発見しました! 高度約一万メートル!」
彼女の報告とともに、優人のアーマーの情報システムにも同様の情報が流れ込む。小さな点が映像内に表示され、それがウィンドウに拡大表示される。そのコウモリ型の翼を持ったシルエットは間違いなかった。カミーラだ。
しかし、妙に動き回っている様子で、カメラの追随が間に合わない時がある。どうしたんだと優人が訝しがっていると、
「ターゲットワンの周囲にガールズギア四体とドローン数十機を確認! 所属は……。アリステラ社PMSCです! おそらくカミーラ型です! 現在ターゲットワンと交戦中の模様!」
と<サウンドメイカー>を懸架している機体のガールズギアが報告してきた。どうやら、アリステラ社はシノシェア社を信用していなかった模様だ。
「あいつらめ……」優人は歯噛みした。その時だった。
「こちら<ダンジョンマスター>。ファーストパーティは作戦を開始せよ。Y1とU1は攻撃を担当。A1は戦闘空域を離脱し<サウンドメイカー>を起動。A2は搭載飛行ドローンを射出、A3以降の機体はY1とU1をサポートせよ。幸運を祈る」
なにが幸運を祈る、だ。幸運は祈るものじゃねえ。掴むものだ。
司令部の言葉にうそぶきながら、優人は空の一点を見つめた。
カミーラが自分の同型機たちと戦っている。
ならば。
俺はあいつを助けるだけだ!
そう心の中で叫ぶと、四肢先端のプラズマ発生機構をさらに稼働させ、自分の体を加速させていった。
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