第2話 インタビュー
『さて ! それではこの『
「……本物の通販場組みたいな流れだな。でもなんで『魔法使い』なんだろ ? どっちかというと『戦士』とかの方が生傷が絶えない気がするけど……」
詩にジュースを手渡しながら、夕夏は首をかしげる。
『……あれは同居している義理の母が話し合いをしたいというので二人きりになった時のことです──』
「きっとお姑さんが事故かなんかで大怪我をした時、『
詩はジュースを受け取って礼を言ってから、そんな予測を述べる。
『……義母は『お前さえいなくなれば全ての問題は解決するのよ ! 』なんて金切り声を上げながら、隠し持っていたハンドアックスで襲い掛かってきたんです。私……驚いちゃって……何も出来なくて……ただただこんな時のために修得していた無詠唱の風魔法で義母を切り刻むのが精一杯でした……』
画面の中の中年女性は俯く。
「『何も出来なくて……』とか言ってる割にちゃんと対応してるな……」
「お姑さんもお嫁さんも攻撃スキルを持ってるんだから異世界の嫁姑問題は激しいね~」
夕夏と詩は呆れ顔になる。
そして夕夏が、旦那は何をやってたんだ、と言おうとした瞬間、画面に戦士風の中年男性が一人で映った。
『……いやあ、あの時はびっくりしましたよぉ。一階で大きな音がしたと思ったら、台所で血まみれの母と妻が倒れているんですから ! 間の悪いことにその時、村に回復魔法を使える者がいなかったんです。目の前が真っ暗になりました。このままでは私の大切な家族が死んでしまうのですから……でも、その時思い出したんです ! 救急箱の中に『
画面は切り替わる。
そこには夫を挟んで、両隣に立つ嫁と姑の合わせて三人。
『……二人の傷を『
夫は両腕で嫁と姑の肩を抱く。
彼女達は男を挟んで、張り付いたような微笑みで見つめ合った。
「うわ~うまいこと言ってるけど、絶対これ家族仲は回復してないよ~ ! 目が笑ってないもん~ ! 」
「異世界でも鈍感な夫を持つと大変なんだな……」
夕夏と詩は盛大に溜息を吐く。
画面は再び切り替わる。
痩せて、瞳がキラキラと輝く青年が座っていた。
そしてテロップには「Q、あなたが『
『……僕は中央を本拠地とする大商会が運営する酒場で働いているんですが、そこの店長が厳しい方で『常に 120 %で頑張れ ! そうすればいつか現在の 100 %の力が 80 %で出せるようになる ! ということはその状態で 120 %の力を出せば、過去のお前の 140 %の力が出せるわけだ。つまり常に 120 %の力で頑張っていれば、いつかは過去の自分の 1000 %の力を発揮できるようになり、一人で十人分の仕事をこなせるようになる ! 』と言って僕が頑張れるように 365 連勤のシフトを組んでくれたんです。……ですが 100 連勤を超えたあたりから身体が動かなくなって……』
青年は儚げに俯く。
「ひぃ~ ! ブラックだ~ ! 光の 99,96 %を吸収する世界一黒い物質ベンタブラックも真っ青のブラック企業だ~ ! 」
詩は悲鳴をあげる。
「一体どんな計算なんだよ……。とにかく一人に十人分の仕事を押し付けたいだけじゃないか……」
夕夏は肩をすくめた。
『ですが……その時にこの『
顔を上げた青年は満面の笑み。
画面の端には「個人の感想です」という通販番組でおなじみのテロップ。
そして青年のテンションは上がっていく。
『この『
「ヤクって言うな !! 覚醒剤でも入ってのか !! この『
「ゆ、夕夏ちゃん~落ち着いて~ ! 」
青年のあまりに不穏な言動に思わず声を荒げる夕夏をなだめる詩。
ふいに画面はスタジオに戻る。
「さて ! それでは実際に『
女エルフが楽しくて楽しくてたまらないような顔で台詞を言う。
「さあボブ ! 入ってきて ! 」
その声に導かれて画面の登場したのは、包帯やギブスでマンガのようにぐるぐる巻きになった男だった。
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