第18話 作戦成功
【白虎】が動き出して二日後。ようやく奴らはアルケミストの守護森林前へと着いたという連絡を受けた。
守護森林に着くまでに五回ほど死にかけたらしいが、リエンが上手くシノビを操作して、秘密裏に助けてくれたみたいだ。
冷静に対処すれば、今のあいつらでも問題ないような魔物でも、頭に血が上っていて全く動けなかったらしい。もう少し落ち着いて欲しいもんだが……。
今はそんなこと言ってられないな。
「よし。レアナ、リエン。行くぞ」
「準備OKよ」
「私も大丈夫です」
俺は三人に、光中級魔法の《
だが俺達は、《縁下》の契約によりどこにいて、何をしているかが分かる。
問題は、魔物の中に、エンパイオのような化け物がいたら気付かれるだろうが……今の俺に、気配を断つ魔法はない。
だからこそ、【白虎】を利用することにした。
リエンがエタを操作し、目の前の景色がホテルではなく森の中へ移動する。
そしてそこには……。
「ここが、アルケミストの守護森林……!」
レイガ。ガレオン。リリ。アリナ。みんな……。
……本当なら殴り飛ばしてやりたい所だが……今はそれどころじゃない。
俺はバレないようにレイガの肩に手を置くと、《縁下》を発動させた。
◇◇◇◇◇
レイガ・オルガと仮契約を結びます。
契約内容:雇用契約
契約破棄条件
①雇用主の契約内容の破棄
②雇用主の死亡
③被契約者の死亡
④被契約者の悪事発覚
⑤雇用主への攻撃的行動
契約しますか?
・YES
・NO
◇◇◇◇◇
YES。
◇◇◇◇◇
レイガ・オルガと仮契約を結びました。
◇◇◇◇◇
「っ!? ……こ、これは……?」
既に変化には気付いてるだろう。
何せ、隠しスキルとして受けていた恩恵は1.5倍。今は解放したから2倍……つまり、当時より強い力が自分に備わってるんだからな。
俺は残りの十一人にも、同じように仮契約を結んでやった。
「こ、これって……!?」
「ああ……ああ! 行けるっ、行けるぞ!」
「あの時の力……いえそれ以上よ!」
力が上がったことが嬉しいのか、守護森林の前だというのにはしゃぎまくるメンバー達。
今回結んだのは本契約ではなく、仮契約だ。だからレアナやリエンとは違い、俺達の位置を把握することは出来ない。
俺だって、休んでる間何もしなかった訳じゃない。色々と研究してたんだ。
「よしテメェら! このままアルケミストの守護森林を抜けて、一気に大洋館を攻略だァ!」
「「「「「おう!!!」」」」」
レイガが先頭に立ち、守護森林の中に突入する。
その直後、四方八方から様々な魔物が【白虎】に襲いかかって来た。
「瞬連斬!」
リリの剣術が、一振りで十数体の魔物を切り刻む。
「混合最上級魔法、《
アリナの火、水、風、土、雷、闇、光属性を混ぜ合わせた混合魔法が、眼前の敵を焼き尽くす。
「剛腕崩壊波!」
ガレオンの連続パンチが風圧を幾重にも重ね、巨大な魔物を一瞬で潰す。
「火炎最上級魔法、《爆裂》!」
レイガが魔法を唱えると、魔物の内側から膨れ上がるようにして爆散した。
他のメンバー達も、生き生きと魔物を殺していっている。
「はは……ははははは! そうだよ、これだ! この感覚だよ! 戻ってきた……俺達の強さが戻ってきたぞォ!」
レイガが嬉々とした顔で吠え、物凄い勢いで進んでいく。
派手に暴れ回ってくれているおかげで、魔物達は【白虎】に群がり、俺達には気付いてる様子もない。
見ての通り、今回の作戦は【白虎】に暴れ回ってもらい、俺達はその後ろをひっそりとついて行くだけ。
それだけで戦力を温存出来るし、殺すことに目がくらんでいるあいつらは、魔物の素材を全く集めていない。それらはリエンに頼んで、しっかりと回収済みだ。
「はぁ……それにしてもすげぇな……」
威力は前とは比べ物にならないが、勢いや派手さは俺がいた【白虎】と同じだ。俺、こんな奴らの中で、一人なんの支援も無しにやってたんだなぁ……もっと自分を労ってやろ……。
「レイガさぁーん! どこまで行ったら休憩するよ!」
「あぁーん!? 突っ込め突っ込めぇ! 休憩なんていらねーだろ!」
「はは! ちげーねー!」
そうそう。お前らは俺達のために、休憩無しに突っ込んでいけば良いんだよ。
有言実行。あいつら、休みなく突き進んでいくな。いやー楽だ楽だ。
「リーダー! 森の先が見えてきたわよ!」
え、早っ。
「このまま押し切る!」
ま、ここまで来たら、
守護森林の出口。そこには、人間の十倍のデカさを誇るスーパーゴリラがいた。
「あいつが最後だ! オルァァァァ──」
レイガが《爆裂》をスーパーゴリラに向ける
が。
「ァァァあべぶっ!?」
今まで調子よく進んでいたレイガが、スーパーゴリラのパンチによって地面に叩き付けられた。
「「「「「…………へ?」」」」」
パーティーメンバー達は何が起こったのか分からず、呆然とその光景を見ていた。
「はいはーい、お疲れお前らー。ここまで連れて来てくれて助かったぜ」
「……う、そ……!?」
「……ジオウ、さん……?」
みんなの前に姿を表すと、衝撃的という顔で俺を見た。そりゃそうだろう。俺がここにいるなんて、誰も思わなかっただろうからな。
「よう、お前ら。久しぶり」
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