第3話 スノードロップ
「『西風の神』っていう物語があってさ、ギリシャの神話なんだけど。フローラは自分がゼピュロスに愛されてるって思ってたけど実は勘違いで、本当は別の人が好きだと気付くとその人を遠くに離してしまったんだって。そしてゼピュロスは平和を保つ為に、怒りを沈める為に本当に好きだった人を花に変えてしまうんだよ。」
愛香、図書館で受験勉強手伝うって話だったよな。なに呑気に本読んでるんだよ、俺の方が勉強してるわ。
しかし可哀想な話だ。愛情じゃなくて平和を選ばないといけない立場なんて、あっていいわけないのに。
「痛っ!」
昨日の夜アネモネの毒で皮膚炎をおこしてしまった。読んだ教材の中にも「扱う時は注意を払うこと」って書いてあったのに、うっかりしてた。
しかし頭を使うというのは疲れることだな、なんで人間には脳みそなんてあるんだろ。
自販機で買った甘めの珈琲を脳の砂漠に流し込んだ。
「え?聖也、珈琲飲めるようになったんだ。失恋したの?話、聞くけど?」
こいつ、なめやがって。
失恋なんかしてない、逆に恋したんだよ俺は。
「失恋なんてしてねえよ。」
「嘘だ!振られたんでしょ!」
こいつ、花に変えてやろうか!!
------------------- forsaken
「それじゃまた来週ねー。」
早めに勉強を切り上げて帰ることになったのであの店に寄ってみることにした。
ま、昨日から決めてたんだけど。
前と同じように珈琲の香りに引き寄せられて少しだけ通学路を離れた道に入るとすぐにその店が顔を出した。
『おにぎりカフェ』ってよく考えたらなんだよ、珈琲とおにぎりなんか合うわけない。洋と和は合流しない運命なんだから。
恐る恐る店のドアを開ける、る?え、え!今日定休日じゃないか!毎週金曜日と日曜日は休みなのか!不覚、知らなかった。にしても鍵がかかった店に入ろうとしている所を誰にも見られてなくて良かった。
いや、珈琲の匂いしたよな……。
『ガチャッ』
「あっ……。」
中からあの人が鍵を開けて出てきた、そりゃこんなにドアを開けようとされたら怖いよな!
取り敢えず今日は引き返そう。
「すみません!間違えましたー!」
小走りで店を後にしようとすると腕を思いっきり掴まれた。
「へ?」
------------------- 運命、必然? カオス理論
「君、あの時の!いいよ、寄って行って!」
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