夏休み7日目
よし、午前中は大西さんに教える勉強の予習をした。講習の予習もできた。あとは講習を受けて大西さんに勉強会?という名の思い出作りをして…
いつもより気合いをいれて僕は家を出た。
そういえば昨日、いきなり呼び捨てにするなんてどうしたんだろう。呼び捨てする分には別にいいんだけど、
「初めて呼び捨てされる気がしないんだよなぁ」
大西さんの距離感の問題だろうか。かなり距離感が近いからな。そんなことを考えていると学校につき、講習が始まる。
…
少し早めに講習が終わった。大西さんはもういるかなんて考えながら空き教室へと向かう。
「もしかして待たせちゃった?」
案の定というべきか、すでに大西さんは待っていた。
「ううん、大丈夫。お疲れ様」
「ありがとう、早速だけどやる?」
「うん!お願いします!」
「現代文といっても完全に僕の好みの内容なんだけど…まずこれ読んでみてほしいんだけど」
そう言い僕の好きな小説の序盤部分を見せる。
これは高校入学後、学校裏の芝生で出会った2人の話だった。約束している訳でもないのに毎日同じ時間に会いに行く。まるで恋人同士のような光景、しかし、思わせぶりな態度があったにも関わらず男側には彼女ができてしまった。その時に放ったこの言葉。
『私たちってどういう関係なの?』
この問いが初めて読んだ時からずっと引っかかっていた。だって付き合っていたわけでもなく、ましてや告白したわけでもない。男は悪くないのではと思っていたが、女性側の意見も聞いてみたかった。
「この問いを聞いて大西さんがどう思ったか、教えて欲しい。僕が教えるというか、2人で考える感じになるけど勉強会ってこんな感じ…だよね?」
「うん!ちょっと待ってね…女の子は最初から好きだったのかな、彼女ができて気づいたのかな。」
「そこも気になるところだよね。それによって結末の捉え方も変わってくるだろうし…」
「今日、本借りてっていい?結末気になっちゃった。今のところ、この男の子に悪気はなかったんだろうけどきっとこの後変わってくるよね。」
「うん。ゆっくり読んで。そうだよね…この曖昧な関係って上手く言葉にできない難しさが…」
そのまま僕達はしばらく議論しあった後、解散となった。
「本、浮いて見えてるけど大丈夫?」
「もうほとんど誰もいないし大丈夫だよ、ゆっくり読ませてもらうね。…あと、次暇な日っていつかな?夕方ぐらいかな。」
「うーん、明後日が丁度いいかな。講習もないんだ。」
「じゃあその日ね!夕方近くの海まで行こう。」
「わかった。じゃあ5時にまた学校で。」
「うん、ばいばい!」
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