夏休み4日目

今日は講習の日だ。すなわち大西さんとの最初の思い出作り。


公園で買い食い…か

いつも学校が終われば1人で帰っているんだからしたことがないのも無理はないと自分に言い聞かせる。

そういえば高校に入ってから誰かと登下校したことはあったっけ、いまいち記憶がぼんやりしていて思い出せない。

まあ毎日ぼんやり過ごしているんだ。思い出せないのも無理はないか。


僕は学校へと歩き始めた。


受験生というのもあり講習の人数は去年よりも増えていた。先生が教室にやってきて講習が始まる。



長かった。特に最後の授業なんていつもと先生が違い全くつまらない。しかも時間オーバー。

大西さんのことだ、時間が過ぎても待っているだろう、急がなければ



「待った?」


「ううん!全く!来てくれて嬉しいよ」


「ごめん、講習長引いちゃって。」


「しょうがないよ、それにこうやって待ってるのも新鮮だしっ」



「そっか、それじゃあコンビニ、行く?」


「もちろんっ!」


「思ったけど大西さんで食べたり飲んだりできるの?」


ふと思った疑問。買い食いも何も彼女は飲み食いできるのか。


「それがさできないんだよね、だから雰囲気だけでも味あわせてね」


「…まあ幽霊だもんな」


悲しそうな笑顔を大西さんは浮かべる。


「ふぅ〜ついたね!」


「ほら、なに食べたいの」


「え…いやだから私食べれないよ?」


「雰囲気だけでも、でしょ」


「…!じゃあ、フルーツサンド!」


「わかった、じゃあお会計してくるから外で待ってて。」


「うん!」


レジから見える後ろ姿だけで楽しそうだった。

よく笑う大西さんだけど悲しいなら笑顔作らなきゃいいのに、そう思いながら会計を終え外へと向かう。


「じゃあ、行こう。そこに公園あるし。」


「私、ブランコ乗りたい!」


大西さんの案でブランコで買い食い。


…まあ、買い食いも悪くないと思えた。


「ブランコ、楽しい?」


「もちろんっ!だってブランコ好きだ…った気がする」


そう言い立ち漕ぎし始める。周りから見たら勝手にブランコが動いてるんだからと止めようと思ったけど、楽しそうに笑うから止められなかった。


他愛のない話をして、僕もご飯を食べ終えて、もう解散だろう。これが最初の思い出作りだったけどこんなのでよかったのか。


ブランコに乗る大西さんを見上げる。僕もブランコは好きだった気がする。上手く漕げなくて、押してもらって…って、誰に?


「よいしょ!そろそろ帰ろっか!」


「…帰ろっかって大西さんどこに帰るの?」


「私は学校にいるよ。どこかの家に勝手に入る訳にも行かないし。」


「そっ…か、じゃあ学校まで送るよ」


なんで僕は今、家にきたらいいのになんて思ったんだろう。そこまで仲が良い訳でもないだろう。



「ここまででいいよ、今日はありがとう、楽しかった。…ねえ私も学校で勉強したいな、勉強、教えて?」


「それが2つ目の思い出作り?」


「そう!だって放課後に友達と勉強会とか、よく言うでしょ?私、理科の実験したい!」


これはまた許可が大変そうな…


「ちょっと実験は無理…かな、」


「そっか…」

悲しそうな目でこっちを見てくる。


「ご、ごめん。その代わりちゃんと勉強教えるから。3日後、2階の空き教室で。場所わかる?」


「大丈夫!3日後ね!」


一瞬で彼女の顔が晴れるのが少し面白かった。


「うん、またね」


思い出作り1つ目、無事終了。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る