第30話
《新奈side》
渉の言う通りだった。
なにが好きにならなきゃそれでいいだ。
もう好きになりかけてるくせに…。
好きになってからじゃ遅い。
本当にその通りだ。
渉に言われてガツンと頭を殴られたような、そんな衝撃だった。
ちゃんと言いにくいことも言ってくれた渉に感謝しなきゃ。
「ただいま」
家に帰った私は、伊吹くんとお揃いで買ったブレスレットを外して、缶の箱にしまった。
伊吹くんとのデートはどれも楽しかった。
今まで経験したことがないトキメキやドキドキを、たくさんくれた。
伊吹くんも悪気があって、思わせぶりなことしてるわけじゃない。
なんでこんなことをしているのか意図は分からないけど。
伊吹くんがいい人なのは近くで接して分かったから。
だからいい思い出としてしまっておこう。
これからは、ちゃんと好きになった人と付き合って、デートして。
普通の恋愛をすればいいんだ。
そう思うと心がズキンと痛んだ。
これも、思い込み。
恋愛ごっこの一貫。
伊吹くんとデートするのをやめれば自然に消える。
私はスマホを取り出して文字を打った。
”もうデートするのやめよ”
きっと伊吹くんに直接言ったら、辞めてくれない気がしたから。
また、伊吹くんの口車に乗せられて、デートをしてしまう気がしたから。
だから直接ではなく、文字で送ろうと思った。
ただ、面と向かって言う勇気がなかっただけかもしれないけど。
後ろ髪を引かれる思いで、送信ボタンを押した。
伊吹くんからは、なかなか返事が来なかった。
土日はずっとスマホを気にして過ごした。
伊吹くんから返事が来たのは、月曜日の朝だった。
”分かった”
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