第23話
カメのコーナーでカメを見ながら色々喋った後、お土産コーナーに来た。
桃々たちのところに戻ると思っていたのに。
「なにか買うの?」
「新奈とお揃いのもの買いたい」
伊吹くんはどこまでもデート気分を味わいたいみたいだ。
「分かった」
「あれ、反抗しないんだ」
「反抗したって、どうせ言動の力でねじ伏せるでしょ」
「言い方!」
そう言いながら、笑う伊吹くん。
だって仕方ないじゃん。
私もお揃いのもの、ほしいと思っちゃったんだもん…。
キーホルダーや文房具、いろんなお土産があって目移りする。
伊吹くんも、「これもいいけど、あれもいいな」って迷っている様子だった。
「伊吹くんって意外と優柔不断なんだね」
「えー?いつもはすぐ決まるんだけどなー」
「そうなの?」
「けど今日は、新奈とお揃いのもの買うから。慎重に選びたいじゃん」
「そっか」
伊吹くんの言葉一つ一つが嬉しいと思ってしまう。
やっぱり本当に付き合ってるんじゃないかって錯覚してしまう。
伊吹くんが真剣にお揃いのものを選んでいる横顔を見ていると、胸がぎゅーってなる。
どうしよう、このままじゃ私…。
「これとかどう?」
私の気持ちなんて全然知らずに、無邪気に聞いてくる伊吹くん。
伊吹くんが手に取っていたのはブレスレットだった。
細い紐が何重にもなっているブレスレットで、小さな貝殻のチャームがついている。
男子がつけても大丈夫そうな、かっこいい感じのデザインだ。
「うん!かわいい」
2人でレジに行って、赤と青の色違いを買った。
伊吹くんとお揃いのものを買っちゃった。
しかも身につけるやつ…。
こんなの買ったところで、学校につけていけないって分かってるのに。
嬉しい気持ちの方が大きいなんて…。
お土産屋さんを出るともう1時間くらい経過していた。
そろそろ桃々たちのところに戻んないとな。
戻ったら桃々になんて言われるかな。
そんなことを考えていると、伊吹くんは「あとちょっとだけいい?」って言って、お土産コーナーの裏にまわった。
「こんなところに来てどうしたの…?」
伊吹くんは私の質問には答えず、さっき買ったブレスレットを袋から取り出した。
「腕、出して」
「え?」
戸惑っている私の腕を伊吹くんが持ち上げる。
そして袖を少しまくって、さっき買ったブレスレットを私につけてくれた。
「うん、似合ってる」
「…ありがとう」
まさか今つけてくれるなんて思ってもなかった。
自分でも顔が赤くなったのが分かる。
建物の影だから伊吹くんに気づかれてないよね…。
そう思って伊吹くんの顔を見ると、伊吹くんと目が合ってしまった。
「っ…」
もう心臓が張り裂けそうになる。
なんでこんなにドキドキしてるの…。
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