第22話
「そういえば、さっきの写真送ってよ」
「写真?」
「トンネルの水槽の前でみんなで撮った写真」
「あ、そうだった」
伊吹くんに送ってって言われてたんだった。
伊吹くんの連絡先を聞いて写真を送ると、満足そうに微笑んでいる伊吹くん。
「ってかそんなにその写真欲しかったなら、自分のスマホで撮ればよかったのに」
なんでわざわざ私のスマホを使って撮ったんだろう。
「だって、こうでもしないと新奈の連絡先、教えてくれなさそうじゃん?」
伊吹くんはそう言って少し意地悪な顔で笑う。
別に、普通に聞かれても教えるし…。
多分…。
「やり口がチャラい」
「それ褒めてる?」
「褒めてない」
こうやって言い合っていると、いつもの伊吹くんだなーって実感する。
連絡先交換したってことは、今後伊吹くんから連絡きたりするのかな。
伊吹くん、そーゆーのあんまり得意そうじゃなさそうだけど。
私がスマホをリュックに入れながら考えていると、伊吹くんはぐーっと背伸びをした。
「あーあ、さっき新奈のお弁当もらい損ねちゃったなー」
「あ」
本当だ。
私ばっかりもらって、私のお弁当は全部自分で食べてしまった。
普通もらったら交換とかする…ね?
「ごめん!気が付かなくて!あー、本当ごめんね!?」
「いや、そんな必死に謝らなくていいけど」
「けど、私このままじゃ食いしん坊キャラに…」
私が頭を抱えていると伊吹くんは盛大に吹き出した。
「ぶはっ!食いしん坊キャラってなに?超面白いんだけど!」
伊吹くんはツボにハマってしまったようだ。
女の子にとってはデリケートな問題なのに…。
「ちょっと、そんなに笑わないでよ…」
「ごめんごめん。俺、好きだよ。たくさん食べる子」
伊吹くんの”好き”って単語が出てきて、思わずドキッとする。
「それ、フォローになってないけど」
「そう?」
伊吹くんはまだ面白いのか顔が笑っている。
「じゃあ、今度俺のために作って」
「へ?」
「新奈が作ったお弁当食べてみたいなー」
伊吹くんは私にお願い事をする時、決まって顔を覗き込んでくる。
その仕草がいちいちカッコよくて、かわいくて。
本当にずるいなって思う。
「んんーーー分かった!作ってみるけどあんまり期待しないで」
何を隠そう、私は料理が得意ではない。
今日のお弁当もお母さんが作ったものだ。
でもそんなこと言ったら、食べる専門と思われて、もっと笑われそうと思って口を閉じた。
「嬉しい。めっちゃ楽しみ」
伊吹くんの笑顔に私も引っ張られる。
そんなに嬉しそうにされたら、なんかもう、どうしたらいいか分からなくなる…。
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