あなたは誰なの

雪になりたい

第1話 始まり

「かな、おきて、かなってば」

遠くから、わたしをよぶ声が聞こえる。

「ん、明美」

「かなってば、いつも授業中ねてるんだから、もうすぐ当てられる順番まわってくるよ」

隣のせきに座る明美が小さな声で少しあきれた口調でいう。

「あっ、今授業中か。」

「かなってば、寝ぼけてるのー、もう、寝すぎだよー」

この明るく、世話焼きな水川明美は幼馴染で高校の2年になった今も一度もクラスが離れた事がない。

いわゆる腐れ縁でもある。

机にうつ伏せで寝ていた、私は目をこすりながらそばに置いていた、メガネをかけ、

教科書をひらいた。

「清水ー、問1の問題をといてみなさい」

数学の担任である、通称おまめさんの豆田先生が私の名前を呼ぶ。春が終わろうとしているのか、寝起きだからなのか

妙に教室はムシムシとしていた。

私は席を立ち、黒板に答えを書き、席に戻ろうと振り返る。

「え」

そこにはだれもいなかったのである。

私は驚きのあまり、メガネを外し、もう一度かけ直した。

「あれ」

そこにはさっき、からっぽになった教室ではなく、クラスの生徒がいる空間だった。

呆然と立ち尽くしていると「おい、清水なにしてる、書いたのなら早く席に戻りなさい」

というおまめさんの声で我に返った。

なんだか、キツネにつままれた気持ちになり、よこにいた明美に「さっきみんなでどっかいった?」ときくと、明美は笑いながら「まだ寝ぼけてるの?」とあきれた口調でこたえた。


寝ぼけてでもいたのかなと思い、かなは席についた。

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