第12話 ママ

 「あ、あの、それで、お嬢様、お嬢様と一緒に来られた、まぶしくて直視できないお方は、何方どちらの御令嬢でしょうか」

 「そうですわね。クララ、何方どちらのお嬢様なの」


 「まぁ~、みな様、同じ啓示けいじをお受けになっておりますのに、お分かりになりませんの」

 「…ま、まぁまぁまぁ、ヴォルフ」「…まさか、天使様が降臨されて」


 「旦那様、結論を急いではいけません。…魔物かも、知れません」

 「ナイトハルトっ、不敬ふけいですよっ、先ほどまで神様達も、わたくしの部屋におられたのです」


 「し、しかし、・・・何か、何か奇跡きせきを」

 「…そうですわ、天使マールエル様、先ほどの光の壁はいかがでしょう」


 ぴょこん!「分かりました。それで良いのなら」「一体、どんな奇跡きせきを」

 ぴょこん!「超天使奥義っ、マールエル・ハイパーフォトン・シーーールドっ」

 びゅぅ~~~~~~いん。「「 「「 「おぉ~~~」 」」 」」


 「・・・光の、壁、…これは」

 「ナイトハルト、この光の壁は、先ほど神鬼天竺鼠おにてんじくねずみ(カピバラ)様が、お怒りになられた時、神罰ですら退しりぞけたのです」


 ぴょこん!「ナイトハルト、触れてごらんなさい」

 「いえいえいえいえっ、滅相めっそうも御座いません。天使様もう十分で御座いますっ」

 ぴょこ。「そうっすか」しゅぅ~~~ぃん。

 「「 「「 「消えたっ」 」」 」」



 「おぉ~~~、クララ以外、みんなひざまずいてるぞ」

 ぴょこん!「あきひざまずいて、うやまうっす」

 「せんでよかっ」ぴょこん!「ふむむ」



 「私は天使マールエル、神々から使命を授かりかした。みなを守護し、クララの呪いがかれる様、光を指し示し、導きなさいと、ゆえに私もクララと共に暮らします」



 「みんなを守護するとか言ってるぞ」

 ぴょこん!「引っ込みがつかなかったっすよぉ~」「私は嬉しかったと」



 「ちょっ、ちょっとお待ちをっ、天使様が、私共とお暮しになるのですか」

 ぴょこ。「はい、時折ときおり天に帰らねばなりませんが、使命を果たす為、お世話になりたいと思うのです。いけませんか」


 「し、しかし、私共の家には、天使様が住まって頂ける様な、相応しいお部屋がありません」

 ぴょこ。「いえ、私はクララと一緒のお部屋で良いのです」


 「わたくしとで御座いますか」

 ぴょこ。「そうです。私は貴方あなたを導くのが使命」

 「わたくしはよろしゅう御座いますが、お父様やお母様、みなはどうかしら」


 「僭越せんえつながら、今のお嬢様のお部屋では、いささか、手狭てぜまかと」

 「そうですわね。ではお部屋を替えて、お洋服や調度ちょうど類は、新たに揃えましょう。ねぇ、ヴォルフ」

 「あっ、あぁ~そうしよう」


 「ですが旦那様、どう説明します」「エルンスト、どう言う事だ」

 「このお屋敷には、お嬢様御一人しかいない事を、近隣きんりん者共ものども見知みしっております」


 「う~~~ん、そうだな、まさか天使様を使用人とする訳には、ナイトハルト、何か良い考えはないか」

 「…そう、申されましても」


 「…私に授かったお子、…ではいけませんか」「アリシア、何を」

 「私はずっと願っていたのです、クララに弟か妹が授かりますように、…ヴォルフも頑張ってくれましたが」


 「うーぅんん、しかし」「天が私の願いもお聞き届けになったのですわ」

 「旦那様、良いお考えかも知れません」「ナイトハルトお前まで、天使様だぞ」


 「いいえ旦那様、これほどまでに神々こうごうしいお方を目にすれば、必ずやその出自しゅつじ詮索せんさくする者が現れます」

 「…なるほど、詮索せんさくされぬ様、あらかじ出自しゅつじを出しておくのか」


 「まぁ~、良かった。天使様、例えいつわりでも、私のお子に成って頂けませんか」

 ふるふるふる。「・・・ママ」たた。とっす。


 「…あら、あらあらまあまあまあまあ」

 ぷるぷるすりすり。「…ママ、・・・お母様」「ママでいいのですよマールぅ」

 ぴょこん!「はいっすっ」ぷるぷるすりすり。


 たた。とっす。「お母様、わたくしもママとお呼びしても」

 「まぁ~~~クララ、随分甘えん坊さんねぇ~」

 ぷるぷるすりすり。「よろしいではありませんか。天使様もママと呼んでおられます。わたくしも甘えたいのです」


 ぷるぷるすりすり。ぷるぷるすりすり。「まぁ~、でもね。お胸をするするするのは、ひかえてもらえると嬉しいわ。ヴォルフがうらやんでいるわ」

 ぴょこん!「分かったっす、ママ」「承知いたしましたお母、ママ」

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