28歳独身の女教師の元に教え子の美人双子姉妹がメイドとしてやって来た
風間 シンヤ
第1話
私の名前は
本当にこれと言った特徴が特になくて、しいてあげるなら、28歳になって未だに独身なのと、家事をするのが億劫で、アパートの部屋が汚いぐらいだろうか……どれも胸を張れる特徴ではないけれど…………
「先生」
私の背後からとても涼やかで透き通ったような声がして振り向くと、そこには誰もが思わず一回は立ち止まって見てしまうような美人な女子生徒がそこにいた。
「先生。クラス全員の進路希望調査集まりましたので」
「……えっ、あぁ!ありがとう。浅川さん……」
いけないいけない。私も一瞬見惚れて時が止まってしまった。いい加減私も慣れないと……
彼女は私が受け持っているクラスの生徒の1人で、
唯一、彼女に欠点があるとしたら、表情があまり変わらないところだろう。私も、彼女を時々を目撃する事はあるが、笑ったり泣いたり怒ったり驚いたりする顔を一回も見た事がないし、生徒達もみんな目撃していないという。
まぁ、だからと言って彼女が全くモテない事はなく、むしろそれがいいと言った男子から沢山告白されるが、その無表情と冷たい感じの声色で断れた事から、彼女は「氷の女王」と皆から呼ばれていたりする。
と、いつまでボケっとしてる訳にもいかないわね。私は浅川さんから進路希望調査を受け取ろうと手を伸ばしたその時……
「せ〜ん!せいッ!!」
「ひゃあぁぁ!!?」
急に後ろから抱きつかれて、私は驚いて浅川さんから受け取った進路希望調査を床に落としてしまう。
「ちょっ!?浅川さん!?急に後ろから抱きつくの止めてっていつも言ってるでしょ!!?」
「ん〜?先生!浅川は今この場に2人いますよ!どの浅川ですか!」
「状況から考えても貴方しかいないでしょう。
そう言って浅川さんは床に落ちた進路希望調査を拾って集め、私に抱きついている女生徒を見て心なしか先程より冷たい声でそう言った。
私に抱きついてきた女生徒は、浅川 日菜。彼女も私が受け持ってるクラスの生徒である。そして、彼女は浅川 氷菓さんの双子の妹でもある。
容姿は瓜二つの2人だけど、性格は真逆で、浅川 日菜さんはとにかく明るくて、いつも笑顔を振りまいている。そのせいか、浅川 氷菓さんは美人と言われるが、浅川 日菜さんは可愛いと言われる事が多い。
双子なのにここまで違う2人だけど、やっぱり浅川 日菜さんも男子からモテる。下手したら告白された回数は浅川 氷菓さんより多い。けど、やっぱり浅川 日菜さんも何回もきた告白を断ってるみたいだ。
「あっ!浅川さん!ごめんなさい!1人で拾わせてしまって……」
「いいえ。先生のせいではありませんから。悪いのは日菜のせいですし」
「ちょっ!?お姉ちゃん!私のせいにするなんてひどぉ〜い!!」
「事実でしょう。それと、迷惑だからいい加減先生から離れなさい」
「えっ!?先生迷惑だった?私に抱きつかれるの嫌だった?」
突然、浅川 日菜さんが私の方を見て目を潤ませてそう言ってきたので、別に何も悪い事はしてないはずなのに罪悪感に駆られてしまう。
「いや!?迷惑とか嫌じゃないのよ!?ただ、TPOを考えてもらえたら……」
「やったぁ!!先生♡大好き♡」
私の言葉の後半のセリフを多分全く聞かず、嬉しそうに私を更に強く抱きしめてくる浅川 日菜さん。
「先生は日菜に甘すぎです」
心なしかとても冷たい目で私を睨む浅川 氷菓さん。美人双子姉妹からの熱い抱擁と冷たい眼差しという対照的なものを受け、私は思わず溜息をついた。
数時間後、仕事終えて帰宅した私は、コンビニ弁当を片手にアパートの自分の部屋の扉の前に辿り着いてある事に気づく。
「えっ?部屋に明かりが……」
まさか泥棒か?と思ったけれど、泥棒が明かりをわざわざつけて物色するとは思えない。となると……誰?独身で一人暮らしの部屋に誰かいるはずがないのだが……
「とりあえず……開けて確認しましょう……」
私は部屋の扉を開けて中に入った瞬間、衝撃の光景が目に飛び込んできた。
「えっ!?嘘!?床が……見える!!?」
正直、仕事終わりに家事をするのが億劫で、部屋はゴミが散らかり放題で床がほとんど見えなかった私の部屋が、物が片付けられて綺麗に見えていた。しかも、心なしから床がピカピカになってる気が……
「一体……どうなってるの……?」
夢でも見てるのではないかと思い、思わず頬を抓る私。しっかり痛かったのでは夢ではないみたいだ。
『あっ……!お姉ちゃん!帰ってきたみたいだよ!』
『初日ですからね。しっかりと挨拶するべきでしょうね』
リビングの方からどこかで聞いた事があるような声がする。そのリビングの方が2人の人物がやって来て私は驚愕で目を丸くする。
『お帰りなさいませ。ご主人様』
「えっ!?ええぇぇぇ〜ーーーーー!!?浅川さんッ!!?」
私立藍那高等学校の有名美人双子姉妹、浅川姉妹が何故かメイド服で、私の前でメイドらしい挨拶をしたのだった。
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