第5話 これが村長(1)
「俺、村長のこと嫌いなんだよな……」
この
「まぁ、それでも活動報告しなきゃいけないんだけどな……」
そう、あいつは村人たちにばれない様に隠れてしていることがある。そのことに気づいているのは、俺と村長の息子のアランだけだ。しかし、本人はそのことを誰にも気づかれていないと思っている。なんせ、痕跡を残さない様に、来る日まで証拠集めに徹しているからな。そう、その隠している秘密とは……
「なんだ、今日はやけに遅かったので、
ふと、俺がそんな事を考えながら歩いていると、木の下で腕を組みながら、父親と同じ金色の髪を持つ少年がそこに立っていた。正確には、俺に対して悪態をつきながら翡翠色の眼で睨んできているのだが。というか、目つきが悪いんだから、そんな風に見るなよ。
「なんだよ、まるで死んでほしかったかのような言い方だな、アラン?」
「おや? そのように聞こえてしまったのか、それはすまないね」
こいつの言葉と顔が一致していないんだよな。というか、そんなに見つめるなよ、怖いな。
「いや、別に構わないよ、俺とお前の仲だしな、それより村長は家に居るかな?」
「一応言っておくが、私とお前はそんな仲ではない、それと、くず野郎なら家に居るとおもいますよ、
「そうか……ま、活動報告してくるよ、それじゃあ」
俺はそう言い、無言でアランの肩を叩くと、村長の家に向かった。家に向かう途中、何か聞こえたような気がしたので振り返ると、なぜかアランは悔しそうで、どこか悲しみに満ちた表情をしていた。
「どうしたんだ、あいつ?」
俺は、その表情を見て思った。アランはいい奴だ、それに責任感が強い奴でもある。だからこそ、父親のことも許せないし、昔のことも気にしているのだろう。……俺たち三人が疎遠になってしまったこと。そんなこと、俺はもう気にしてないというのに。しかし、俺からさっきのように言ったとしても、アランは否定するだろう。だから俺は、アランから言ってくれるまで待つことにした。なぜなら、きっとそっちのほうが前より仲良くなれる気がするし、何よりあいつが納得するだろう。
「ったく、真面目過ぎなんだよ、あいつは」
俺は、そんなことを言いながら、村長の家の扉をノックし中に入った。
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「ただいま、父さん」
私は、そっと扉を開け小さな声でそう言った。なぜ、自分の家なのにこんなことをしなければいけないのか? その理由は、父親の人道を踏み外した行為を彼以外が知っていることを、まだ知られてはいけないからである。そのため、できるだけ怪しまれない様に、毎日静かに入り痕跡を残さないように心がけている。
「……またか」
リビングに父がいないことを確認すると、二階の父親の部屋辺りから、一定の間隔で何かが、きしむような音が聞こえてくる。この音を聞くたびに胸が苦しくなり、何もすることができない自分に対して腹が立つのだ。私は、あの音の正体が、母親との
「ちッ、くそ野郎が!」
私は玄関を出て小さく呟き、いつもの場所に向かった。父親がまだリビングにいないということは、アルトがまだ報告をしに来ていないということになる。いつもより少し遅いというのが気になるが、ここで待てばいつかは来るだろうと思い、心を落ち着かせながらアルトを待っていた。
しばらくして、アルトがこちらに向かってきたことに気が付いた。正直、アルトと話すときは緊張する。それは昔、真実を知らなかったとはいえ、アルトに対して酷いことを言ってしまったからである。しかし、一年前に謝ろうと決心し、積極的に話に行っているのだが、なぜか毎回、嫌味を言う奴という印象を与える様に話しかけてしまう。
「なんだ、今日はやけに遅かったので、
このように、自分でもアルトとの接し方が分からなくなってしまい、自分でも泣きたくなるほど素直ではなくなってしまっていた。すまないアルト、本当にすまない。
「なんだよ、まるで死んでほしかったかのような言い方だな、アラン?」
ほらやっぱり! そう聞こえてしまっているじゃないか! ここは冷静に謝るんだ! 私なら言える、言えるぞ!
「おや? そのように聞こえてしまったのか、それはすまないね」
い、言えた! やったぞ! どうだ、見たか! 私はやればできるのだ! これでアルトも少しは、許してくれただろうか?
「いや、別に構わないよ、俺とお前の仲だしな、それより村長は家に居るかな?」
俺とお前の仲だと!? アルトは私のことを許してくれているというのか? ということは、これでそうだと言えば、やっとアルトと友達に戻れるのか! これでやっとアルトと友達に……
「一応言っておくが、私とお前はそんな仲ではない、それと、くず野郎なら家に居るとおもいますよ、
駄目だ、それでは駄目なんだ、君がそう思ってくれているのはすごくうれしいし、今すぐ仲直りをしたいと思う。だけど、それでは、今までと同じで君に甘えてしまっているままなんだ、自分勝手で本当にすまない。でも、やはり自分から言いたいんだ、申し訳なかったと。
「そうか……ま、活動報告してくるよ、それじゃあ」
私は、卑怯者だ。アルトにあんなに酷いことを言っておいて、アルトにきっかけを作ってもらい、またあの時のように戻ろうとするなんて……
「すまない、アルト」
私は、聞こえるはずもないアルトに向かい謝っていた。こんな卑怯者でも、最低な父親の子供だとしても、もう一度君たちの隣にいていいのか? と思いながら。
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