僕と魔剣と、神様と
将月真琴
序章 僕と出会いと、旅立ちと
第1話 出会い
「っあ゛ーー……」
意味のない声が口からこぼれる。塾帰りにいつもの高台に寄って、サイダーを片手に街を見下ろしてみる。
夜の街は、綺麗だ。誰だって一度は思うんじゃないだろうか。あんな風にきらめいて、でもなんというか、さみしい。
僕――
そんな生活がルーチンワークみたいになっているぐらいだ。
「さてと、帰るか」
誰に向けるでもない独り言を吐いて、僕は手すりから離れて歩き出す。階段を下って少し歩くと国道に出る。最近流行りのドラマの主題歌を鼻歌で歌いつつ、そちらへと歩いていく。
夜の街はきれいだけれど、ちょっと怖い。でもその怖さが不思議な魅力を持っていて、みたいな誰に伝えるでもないことをぼんやりと考えていた。
そのせいか、ドン、と背中を押されたとき、とっさに反応することができなかった。
「あ、やば……」
よろけて車道に出てしまい、戻らないと、と思ったときには、
あ、れ?
なにが?
おきた?
…………。
……………………。
……。
渡りに船、って感じだね。そう、誰かが言っているのが聞こえた気がした。
◇ ◇ ◇
目を覚ますと、そこは石でできた洞窟だった。鍾乳石?みたいなものが上から垂れている、いかにも、って感じの洞窟だった。
なんだかぼんやりとした頭のまま、体を起こす。どうやら僕は何も敷かずに地面の上に寝転がっていたらしく、あちこちに泥が付いている。
このまま帰ったら母さんに叱られるぞ、と思いながら体の泥を叩いて落とす。そこで、自分が置かれている状況の不自然さが目に付いた。
まず、自分は学生服を着ていたはずだ。それなのに今はとても簡素な服に着替えさせられている。そして持っていたはずの鞄がない。教科書やノートなんかも大切だが、あの中には携帯電話も入っていたのだ。失くすのはあまりにも惜しい。それにこんな洞窟があの近辺にあったとは思えない。というか、出口が存在しない気がするのは気のせいだろうか?
どうすればいいのだろうか、という困惑だけが先に立ち、次に自分が何をすべきなのか全くわからない。
そんな風におろおろしていると、どこからともなく少女が現れた。
簡素な白いワンピースに、同じ色の髪。そしてどこか不遜だとも感じられる吊り上がり気味の目は、紅。
「――――――」
少女が口を開き、何事かを僕に向かって告げている。しかし、その言葉は日本語ではなく、かといって英語でもない、不思議なことばだった。
僕が尚もおろおろしていることで何かに気が付いたのか、少女は顔をしかめてガリガリと頭を掻くと、またどこかに消えてしまった。
…………っていうか今あの子なんかすうっと消えなかった!?
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