第2話 思い
俊哉に陵應への入学を催促したとある日の夜。
自宅の部屋にて座布団へ座りながら某野球ゲームをしている少年の姿があった。
彼の名前は村神秀二。
前話で俊哉を陵應へ誘った人物である。
「考えさせてかぁ・・・」
手に持っていたコントローラーを手放しポツリと呟く秀二。
秀二はリトルシニア選手権大会優勝投手であり、その影響が強く県内外の強豪校からの誘いが絶えず来る。
今日も家に戻ると県内の強豪校のスカウトらしき男性が来ており挨拶と話をしていた所である。
しかしこの時点で秀二はすでに陵應への入学を決めておりキッパリと断りを入れていた。
ここまで彼が陵應に拘る理由とするのは、徹底された管理や設備等の学校環境は勿論であるが、監督の手腕も一つの要因である。
神奈川陵應学園という正式名称であるこの陵應はここまで5年連続で甲子園へ出場を決め、春夏での計算だと5年間で夏5回春4回の計9回の出場を誇る常連校である。
その5年連続甲子園出場へ導いたのが現在の監督である。
日本全国から多くの有望選手が入って来るこの高校は実はスカウトをほとんど行っていない。
というのも、野球部関係者が見に行くのではなく監督自身が全国を回ってただ試合を見るだけなのである。
特に注目されている選手に声をかけるのではなく、ただスタンドでメモを取りながら観戦をしていくというスタイルを通し、秀二も実際に球場で何度か目にしていたが最初はただの野球好きなだけかと思っていた。
その後に甲子園のテレビ中継を観て驚いたのは恐らく秀二だけでなないであろう。
恐らくその単純な事が選手たちに大きな印象へと残り自然と陵應への目が行き、実際に行ってみたりネットで調べたりとしていくうちに入学への意思が強くなってきているのだと秀二本人は思っている。
現に秀二もネットで調べ、現地まで行き学校を見てきた口だ。
立地条件の良さ、整備されたグラウンドや設備。
そして何より野球部の選手たちがノビノビとなる中で遥に高いレベルでの練習を目にした秀二の心は完全に陵應へと向かっていた。
偶然か否かは分からないが、神坂もまた同じように陵應への入学を決めており二人の話はすぐに折り合う。
そして残るはという事で今回俊哉に話をしたのである。
(トシのあの一瞬にして雰囲気を変えるあの力。それにトシと一緒にまだまだ野球をやりたい)
そんな事を考えながら座り込む秀二。
きっと俊哉なら一緒に甲子園を目指してくれる。
そう期待に胸を膨らませる秀二であったが、その数日後の出来事が俊哉と秀二の運命を変える出来事になるとは思いもしなかった。
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