第44話 禁忌と教育の成果

『パム、ミル。俺のそばに来い。近くにいて離れるなよ』


『はい、ショキ兄ちゃん』『はいでち』


 エクストラスキル『友達100人』の通話で子ども達に指示を出した。


     *     *


「やろう共!アジトに戻るぞ」


「うーす」「へーい」「おー」「……」


 そこらから返事が返るが、まとまりなし。本当に、こいつら一味なんだろうというか? 俺が怪訝な顔をしていると頭が気付いたのか、話しかけてきた。


「お前、ショキといったな。えらく腕が立つみたいだか何をしてる?」


「猟師です。この2人は俺の弟子です」


「なるほどな……俺はレーバ。この『熱風盗賊団』の頭だ」


 名前負けしてませんか?


「……そんな顔するな。俺とそこの馬を引いてるロスとは以前、盗賊団『灼熱の風』にいたんだが領主の騎士団に討伐されて、この街道に流れて来たんだ」


 話し好きの男だ。要約すると、ここで自分の盗賊団を作っている真っ最中。ほとんどの手下は最近入ったばかりで訓練も教育もされてないらしい。何とか物になっているのが周りにいる10人ばかりで、残りの10人は元々ここに居た追い剥ぎや町のゴロツキを集めたそうだ。


 つまり死んでも何の問題もない連中ということだ!


 禁忌?


 そんなもの、ダンジョンに2カ月以上過ごしてなくなりました。19層のバンパイアの見かけは、ほぼ人でしたから。こいつらも人の皮を被った魔物と思えば良いんです。


     *     *


 戦闘開始。


 今回は子供がいるので、静かに殺ります。『索敵』で位置確認。


 それから自分の手を縛っている『聖縄』を少し緩めて後に伸ばして行く。今の『職業不定』の状態なら到達範囲は約半径50メートル。『勇者』就労時なら魔力が尽きるまでほぼ無限。勇者スキル、マジ、パナイ!


 スルスルと『縄』が音もなく蛇の様に伸びて最後尾に到達。全くやる気のなさそうな男の首に一巻き。キュッ!


 音を立てないように静かに地面に寝かせます。あと19人。


     *     *


「そのうち、このレーバ様が街道で一番の大盗賊団を作り上げてやる。どうだショキ、俺の手下にならないか? 奴隷に売ろうかと思ったが、なかなか良い度胸をしてそうだ……ん? どうした、急に立ち止まって」


「いや、頭で最後かな……と」


「最後? えっ? あれっ? 手下共は?」


 レーバが辺りを見渡すと、少し後に荷物を運んでいた馬が立ち止まっている。その足下に最後に殺ったロスが横たわる。


「おい、ロス! ふざけてんじゃねぇぞ。おいロス!」


 何か気づいたか、レーバが不意に俺の方を向いた。


「て、てめぇが何かやったのか?」


 同時に剣を抜く。


「何かとは?」


 ハラリとロープを解いて見せた。両の手で上に捧げ『聖縄』を解除して消す。俺の手品もどきを見てレーバがギョッとする。


「なんだ貴様は? 何者なんだ!」


 ふっ、何者だと……?


 俺は、この悪党に子供達の教育の成果を見せ付けてやることにした。初めては御手洗会長に披露したかったのだが……。


「パム、ミル。用意はいいか!?」


「はい!」「はいでち!」


     *     *


「アクはゼターイ、ユルチャナーイ。チッコクのミルでち!」


 ※作者注、悪は絶対許さない漆黒のミルです。


「猛き心を力に変えて、今日もどこかで悪を討つ。褐色のパムです!」


 褐色ってどういう意味ですか? ショキ兄ちゃん!


「知ってる人はどこにもいない。知ってる人も知らんぷり。紺碧のショキです!」


 もはや何を言ってるのか自分でも分からない。しかしあえて言う、断じて緑ではない!


「我ら傭・兵・戦・隊」


「「「セイント・カイーン!」」」


 続いてフォーメーション。ここが見せ場だ、しくじるな!


 中央で俺、どやポーズ! 叙々ポーズと思って頂いてけっこう。


 俺の右斜め後方、パムが回り込んで左手を斜め上。右手は腰に! そうだ上手いぞ。


 バカ、ミルは左だパムに付いて行ってどうする。


 テテテテテ。そうそう、そっち!


 ペト。


 あっ?! ミルこけた。

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