第8話 隷属の首輪

 へこんでいたら迎えが来た。


 9時半。この部屋には魔道具の時計がある。かつての召喚者の成果だ。高価だが腕時計まであるらしい。どんだけ優秀なんだよ、先輩勇者。


 廊下に出ると、御手洗先輩達も同じタイミングで部屋から出てきた。


     *     *


 長いテーブルと椅子がある会議室のような部屋に案内された。


 指定された椅子に座って待つように言われる。しばらくすると、バーンハイム子爵らしき人が、騎士さんや昨日の神官長さんなど約10名程を引き連れて入ってきた。


 ちょうど10時。絶対10時になるのを待ってやがったな! 昨日の晩餐会で王様とヒソヒソ話していた恰幅の良いオッチャンだ。


「ああ。座ったままでよいぞ」


 バーンハイムと思わしき人が、手をヒラヒラさせてドッカと鷹揚に座った。


 いや、誰も立とうとしていなかったが。


 騎士の1人が一歩、前に出た。後ろ手で胸を張り、顎を約15度上げて天井に向けて宣言する。


「貴様らの管理を王より仰せつかった近衛騎士団団長、バァーンハイム子爵様のお言葉である!」


 声、でけぇーよ。何か悪いもんでも食ったか?


 バーンハイムさんは、ウンウンと頷いている。騎士団団長様でられたか。


「今後、貴様らはワシの管理下に入るぞ。面倒を起こさず、ワシの指示に従うようにの!」


 うむ、オッチャンいきなりマウントである。しかも管理って、物か俺ら。


 ピキリ!


 御手洗会長の方から、音でない何かが響いてきました。


「お早う、バーンハイムさん。あなたが私達の、お世話係さんね」


「おい女、誰がしゃべって良いと許可した」


 声のデカい騎士が、慌ててデカい態度で止めようとするが、女王様の知ったこっちゃねー!


「あなたに言っておきたい事があったの。まず、私達の部屋ね。これは良かったわ。及第点。褒めてあげるわ。でも、できるならトイレとバスタブが欲しかったところね。それと……」


「ぶ、無礼者! バーンハイム団長に、なんたる言葉づかいか。身分をわきまえよ!」


 御手洗先輩の上からの言葉に騎士団長、本人より控えていた騎士達が腹を立てたようだ。団長様自身は驚いたのか、目を白黒させている。


「何かしら? そこのバーンハイムが私達の物資の管理や調達をする、お世話係さんなのでしょう」


 もはや、呼びすてである。御手洗先輩、そこまでいくと、ちょっと怖いんですけど。


 騎士さん達、顔真っ赤! 後ろの騎士さんなんか、剣の柄を持ってグギギとかやってますけど。グギキですぞ。


「貴方達の勝手な都合で呼び出されたものだから私、何も持ってませんの。そもそも騎士さん方が頼りないから、私達を呼び出したのでしょう? だったら、感謝して色々便宜を図って頂きたいわ」


「ヘ、減らず口を……。余りつけ上がると、こちらも優しくは出来んぞ。貴様らは知らんだろうが、隷属のアイテムという物もあるのだ!」


「あら、隷属のアイテム? ……首輪とか?!」

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