第6話 テンプレね!
ドキドキ、ドキドキ。
口の中が乾いてきた。鎮まれ俺の熱き鼓動!
チートの次は、ハーレム展開の兆しか。あれっ? 御手洗会長、何故か扉を閉めない!
続いて入ってきた片桐先輩が扉を注意深く閉じた。殺意も落胆もありません。えーぇ、ありませんとも。
先輩達の部屋も同じような間取りなのだろう、迷うことなく応接セットに向かい、主のごとく俺に座るように促した。
「タローちゃんで、いいかしら」
「何とぞタローと呼び捨てしてください。会長達は学校では有名人なので名前は存じております」
「そう。ではタロー! 貴方は、これからどうなさるつもり?」
女王様は単刀直入だ。
「俺は職業未定ですからね。お払い箱になる前に、さっさと逃げ出して冒険者になろうと思います。冒険者ギルドが有ればですけど」
職業未定を変更出来る事は、まだ報告しない事にした。もう少し自分の手で調べてみたかったからだ。それに、もうちょっとだけ御手洗会長の庇護の元に居たいと願うのは罪でしょうか?
「理解が早い人は、好きよ」
「私と片桐もいずれ、ここを離れるつもりよ。でも今は、ここで色々な情報を集めておきたいわ。出来るだけ能力も高めることもね。タローには、私達が逃げ出した時の準備をして貰いたいのだけど、どうかしら?」
「俺も、そのつもりです。そのために逃げる時の状況作りやシナリオが必要だと思うのですが……」
「貴方の悲惨なステータスを早く上げる事が最も重要だと思うけど、テンプレも重要ね。了解!」
俺と会長が、僅か10分で書き上げたシナリオがこれだ。
* *
シーン1/片桐の部屋にて
登場人物:勇者・片桐雄也、片桐のメイド・クリスティーナ(適当)
「許せない。何故、聖女ミタライはあの半人前(タローの事、以後タローを半人前と記載)と親しげにするのだ。おかしいとは思わないかクリスティーナ」
クリスティーナが何か言ったらアドリブで返す。
「勇者の僕カタギリこそ、聖女に相応しい。そう思わないかクリスティーナ」
クリスティーナが何か言ったら更にアドリブで返す。
* *
シーン2/訓練所にて
登場人物:勇者・片桐雄也、指導員・ブラッド(仮名、たぶんこんな感じの指導役の騎士がいるであろう)
「ブラッド、僕はこの聖剣を抜いた時、いつもあの半人前の事を思って振るうんだよ。フッフッフ」
片桐、暗い表情で右斜め上空を見ながら小さく笑う(左斜めでも可)。
ブラッドが何か言ったらアドリブで返す。
* *
以下、同様のシチュエーション10パターンをノートに記載。何気にアドリブで返すが多い、それを片桐先輩に渡した。
これを読まされた片桐先輩の、悲しいやら、情けないやらの入り交じった表情。
「タロー君、御手洗会長。これ、要ります?」
「「必要よ(です)!」」
どや!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます