ご主人様と一緒が良いのです~派遣奴隷の猫耳少女はご主人様を夢想する~

あさがおの雫

プロローグ ある日の一幕

「あ~もうにゃ、今回もご主人様と一緒に行けなかったにゃ!」


 ゴスロリメイド服を着た私は、大剣で雑魚の魔物を薙ぎ払いながら愚痴を零してしまう。

 身嗜みはしっかりと、桃色の髪はさらさらだし、猫耳の手入れもばっちり。

 今回のご主人様からの任務は、このダンジョンの地下六階にいる魔物から素材を取ってくるというものだ。


「何が『一番信用しているニャマだからリーダーを任せられる』にゃ。わたしの役目は、ご主人様を守ることであって、ご主人様の右腕になる事じゃにゃいにゃ!」


 まったく、別パーティに居るならユーマ様が本当に危険な時に守れないじゃない!


「荒れてますわね、師匠。ユーマ様も、もう少し師匠の気持ちに気付いてあげればいいのですわ」


 本当に、リシェルちゃんの言う通りだけど、不思議な事にユーマ様に対して今のところは恋愛感情は無いんですよね。なんでだろ?

 リシェルちゃんは、日曜朝に出てきそうな魔法少女の様な装備を着ている。スーのお父さんの力作だそう。これでも、ミスリル糸を使った防御力マシマシの装備で鋼の全身鎧よりも防御力高かったりするのがおかしい。

 そんな魔法少女の恰好なのに、腰に武骨な日本刀がぶら下がっているのが、違和感ですね。抜刀術を教えたの私だけど、別のが良かったかな?


「あはは、ニャマちゃんは元気だねぇ。私もうっぷん溜まってるから先生にも獲物を分けて欲しいわ♪」


 あざみ先生が【収納】からウォーハンマーを取り出しながら、そう言ってきた。

 まあ、交代しても良いんだけど、もう少し魔物をぼこりたい。


 あざみ先生は、巻き込まれ召喚勇者の一人でクラスの先生をしていたらしいの。

 なんでも、本来クラスの中の4人を召喚するはずだったのに、クラス全員召喚したらしいわ。

 ちなみにユーマ様も同じ巻き込まれたそうです。


「じゃあ、あざみちゃんは次の階からにゃ、この階は私が独り占めにゃ」


「……ねぇ、リシェルさん。貴方達のパーティって優真君が居ないときっていつもこの調子なの?」


「エリスさん。そうですわね。今回は師匠も先生も八つ当たりなので、普段はこれほどではないのでございますわ」


「ニャマさんは大暴れしているのは解るのですが、先生迄こんなにはちゃけているとは、思いませんでした。


「あらぁ。先生だって、暴れたい時があるのよ? ……あの糞野郎、また年の事言いやがって」


 今回、初めて私達のパーティに来たエリスさんは、呆れた表情で私達を見ていた。後、先生に年の事を言うのは禁句なのよね~。見た目若いんだけどね。

 エリスさんは、いつもユーマ様のパーティに居るのですが、今回は素材の選別が必要なので、私達のパーティに入って貰っています。ちなみに本名は、緒方エリスで、彼女もユーマ様とあざみ先生と同じ召喚勇者ですね。

 普段の依頼の時は、大体、私、リシェルちゃん、あざみ先生とミュリルってゴブリナの娘がいるんだけど、今回はお屋敷で待機しています。





 そんなこんなで、やってきました地下六階のボス。ミノタウロスですね。正直牛肉って食材な感じですが、今回は角が必要なのです。今作っている魔装具の材料にするそうなので、さくっとやっちゃいましょう。


「グモォォォォォ!」


「おお! 吠えてるにゃ。しっかし、そんな咆哮なんてきかにゃいにゃ」


「師匠、今回は肉はいらないらしいので、わたくしが拘束いたしますわ。そういたしましたら、ど真ん中やっちゃって下さいですわ」


「それでいくにゃ、あざみちゃんは、エリスを守ってにゃ」


「わかったけど、必要ないかもね」


「リシェルの拘束…… ある意味SAN値が削れるのよね」


 その間にリシェルが、土の魔力である黄色の魔方陣を構築している。本来魔法を使う時に構築する魔方陣は一つなのだが、今リシェルちゃんが構築している魔方陣は三重に重ねられている。

【速魔】【制魔】の複合技能によって、高速で魔方陣を構築することで、戦闘に支障が無い速度で放たれるカスタム魔法の万能性は異常だ。


「じゃあ、拘束いたしますわね。[土刺]」


 中級魔法[土刺]の本来の効果は、指定範囲に数本の土の円錐を出し、相手をしたから突き刺すだけの魔法だが、リシェルによってカスタムされた魔法は、効果範囲から土の触手が生え、その触手が鞭のようにミノタウロスに襲い掛かり、四肢に絡まって動きを封じ込めてしまった。相変わらずグロいなぁ。以前戦争のお手伝いした時、広範囲の[土刺]で一部隊をはやにえのように串指しにして全滅させたら、串指し魔法少女って呼ばれるようになったのは笑えたなぁ。

 まあ、私も暴れすぎて、殺戮メイドとか言われてたけどね。


「あ、師匠早くしてくださいですわ。ミノさんの四肢がもげそうですわ」


「にゃ。わかったにゃ[風水螺旋]にゃ」


 おっと、早く止めを刺さないとね。私は、すぐに四重の魔方陣を構築する。魔方陣の色は、二重が風の緑、もう二重が水の青の魔方陣ね。

 すごく難しかったけど、初級魔法[風斬]と[水弾]の複合魔法、私命名[風水螺旋]だ。水弾の周りに風斬を螺旋に纏わせて放つ一撃は、単体なら特級魔法にも匹敵する威力にまでに至ったわ。

 私は、初級魔法しか覚えられなかったからこういった工夫は必要不可欠だったからね。

 

 私の[風水螺旋]は、みごと、ミノタウロスの胸に大穴を開けた。うん、向うの景色が見えるわね。壁だけど。

 その直後、ブチブチと、力を失ったミノタウロスの四肢がもげる音が聞こえていた。うん、スプラッタだグロい。


「エリス。終わったにゃ。素材よろしくにゃ」


「え! このグロいのに近づかなきゃいけないの! いや、顔は綺麗だけどさ」


 エリスはいやいやながら、スプラッタなミノタウロスに近づいて、角を触った。すると、ミノタウロスは弾けるように消えて、場には角だけが残った。

 これは、エリスの固有技能【選別】の効果だね。倒してドロップする前の魔物に使うと、確立を無視して好きなドロップを選べるというチートな技能ですね。


「素材集めは、エリスが居ると楽よね~。一回戦闘するだけど終わるもん。エリスが来る前は、ボスに張り付いて何回も倒してたからね~」


「そう言ってくれると、私も応援に来た甲斐がありますよ」


「にゃ。じゃあにゃ。取るもの取ったし早くお屋敷に帰るにゃ。ミュリルもサリーナも待ってるにゃ」


 そうして、私のパーティは、お屋敷への帰路についたのだった。

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